編集部コラム 第119回  「週刊文春」編集長  2023/07/22

合体! シン・週刊文春特集班

 こんにちは。いつもご愛読ありがとうございます。

 この7月から、週刊文春特集班の人員が大幅増、10人の精鋭が加わってくれました。

 週刊文春は巻頭の「現色美女図鑑」やニュースを伝えるモノクログラビアを含め、写真ページを担当する「グラビア班」(デスク含め7名)、伊集院静さんの「悩み相談」や林真理子さんのエッセイ、連載コラムや小説を担当する「セクション班」(デスク含め9名)、そして、ニュースを追いかけて自ら取材し記事を書く「特集班」(デスク6名含め47名)の63名から成り立っています。

 この週刊文春特集班が一気に10名増えたのです。なぜか?

 それは「文春オンライン特集班」と「合体!」したからです。

 文春オンラインでは、外部のライターや作家の方に原稿を頂く場合がある一方で、自ら取材し記事を書く、という「週刊文春特集班」と同じような動きをする部隊もいました。

 両部隊は、お互いに切磋琢磨し合う関係でしたが、“二重行政”のような無駄や弊害も少なからずありました。例えば、大事件が起きた時、「週刊文春特集班」も「文春オンライン特集班」も我先にと現場に急行します。基本動作は一緒です。現場に行き、近所を聞きまわる「地取り」をして、加害者の評判や家族構成、出身校や勤め先などを尋ねて回る。出身校が分かれば、今度はどなたかから卒業アルバムや名簿をお借りして、写真を掲載して、卒業文集の中身から人柄に迫り、恩師などを訪ねる。こうした際に、お互いの動きがかぶってしまい「文春さんならさっき来たわよ」「もうアルバムを渡したよ」ということもありました。また、文春オンラインは「速報性が命」ですから、分かったことはどんどん出していく。紙の週刊文春は「毎週木曜日発売」ですから、火曜日の校了日(雑誌の最終的な締め切り)までにできるだけ多くの材料を集め、大きな事件では、4ページから5ページ(400文字詰めの原稿用紙で15枚ほど)の分量で、ひとつの「物語」となるように記事を作りあげていく。すると、「あ! あのエピソードを書こうと思っていたのに、もうオンラインに書かれちゃった」、「これじゃあ紙の方はどこかで見たエピソードばかりになってしまう」というような事態もありました。

 マンパワーも取材経費も、無駄遣いと言えば無駄遣い。すぐ隣の部署なんだし、「文春スピリット」は同じだし、一緒になればより効率的に動けるじゃないか、という意見は以前からありました。

 さらに、これまでは、例えば西武ライオンズの山川穂高選手の性的暴行疑惑などを文春オンライン特集班がスクープした際に、週刊文春は報道されるまで全く知らず(スクープの秘密保持は常に徹底され、同じ社内でも他部署には一切知らされないのです)、事前に知っていれば、コラボしてお互いの媒体でフォローの記事を出したり深掘りしたりできるのに、ということもありました。

 そこで今回、「合体!」に踏み切ったのです。

 10人の経歴も得意分野も様々ですが、心強すぎる強力な仲間が加わったことは間違いありません。10人の内訳は、女性が2名に男性が8名。下は26歳から上は36歳まで。前職も多彩で、産経新聞や日経新聞でバリバリ働いていた元新聞記者もいれば、新宿の文壇バーでバイトをしていた女性や某大手外資証券で広報を担当していた者もいます。地方紙で記者をしていた人間も、ライバル誌の「週刊ポスト」や「フラッシュ」にいた人もいます。なかには元ホスト(!?)も。スクープ記者の最も大事な資質の一つは「ネタ元を口説き落とすこと」ですから、まさにうってつけかもしれません。

 強い組織であるためには「多様性」が必要だとよく言われますが、まさに多様で、しかもオンラインでさまざまな経験を積んでいる猛者たちの合流で、「週刊文春 特集班」がより強力になったのは間違いありません。

 今は、「事件に○○君と××さんに入ってもらおう。(よその媒体で出そうな)足の速い情報は即、明日オンラインでアップして、その後も2人は現場に残り、紙の方の原稿も作ろう」などと、一つの取材班でオンラインでも紙でも機動的に出稿する体制を、試行錯誤しながら始めています。

 シン・週刊文春特集班の今後のスクープに、ご期待ください。