「週刊文春」編集部 2023/06/28
プーチンのシェフから裏切り者へ 「ワグネル」創設者エフゲニー・プリゴジンの正体 プリゴジン狂騒曲(きょうそうきょく)
すわ(【おや, まあ, とんでもない】Good Heavens!)、1世紀ぶりのロシア内戦勃発か――。24日、ロシア民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏が「部隊の解体を要求されたので正義を求める」として起こした武装蜂起。南部ロストフ州を制圧しモスクワを目指したが、残り200キロの地点で進軍を停止。氏は隣国ベラルーシへ向かい、部隊の希望者は国防省と契約することで決着をみた。
- プリゴジン氏の狂騒曲
一夜にして世界中の話題をさらったプリゴジン氏とは何者なのか。
「1961年にサンクトペテルブルクで生まれ、強盗や詐欺の罪で20歳から12年間服役後、ホットドッグ販売業を開始。その後、レストラン業やカジノ業で財を成した。2001年、プーチン大統領とフランスのシラク大統領の会食で料理を提供したことで“プーチンのシェフ”の異名を取るに至りました。屈託なく料理を提供する姿勢をプーチン大統領が高く評価したといいます」(地元紙記者)
そんな彼は大統領の料理人から一転、裏切者に。だが今回の騒動で目を引くのは、ロストフを車で立ち去る際、民衆がプリゴジン氏に「Спасибо, Вагнер!(ありがとう、ワグネル!)」と声を掛ける光景だ。筑波大学名誉教授の中村逸郎氏が解説する。
「プリゴジン氏が国内の一部で人気を博している理由は2つあります。1つは前線の情報を発信している点。政府高官が赴かない(おもむかない)中、戦闘服を着て戦地の様子を配信する姿を頼もしく思う国民がいるのです。もう1つは、刑務所仕込みの激しい言葉。『官僚の獣ども!』『ぶくぶくと太ったケツに……』といったショイグ国防大臣やゲラシモフ参謀総長を糾弾した際のような言葉が、長引くウクライナ侵攻下で疲弊し、強い指導者を求めるロシア人に響いているようです」
消息不明だった中、日本時間26日深夜に「ロシア軍上層部を正すことが目的」との音声メッセージをSNSに投稿したプリゴジン氏。軍事体制を“料理”しようとする彼の狂騒曲は第二章へと続きそうだ。