「週刊文春」編集部 2023/06/01

新CEOはわずか3カ月で辞任、新たに100店舗が閉店か…高級食パン「乃が美」が創業以来の危機 FCオーナーには「契約解除も辞さない」という通知が

乃が美(のがみ)は、株式会社乃が美が日本で展開している食パンの専門店である。

乃が美.png


「5月12日付で『1週間以内に遅滞したロイヤリティを支払わなければ、FC(フランチャイズチェーン)の契約解除も辞さない』という通知が届きました。このままでは大量閉店は免れません(まぬかれません)」

 こう語るのは、「高級『生』食パン」の製造販売チェーン「乃が美」のFC店舗のある現役オーナーだ。

 乃が美が創業以来の危機を迎えている。

 乃が美は2013年に設立。“高級食パンブーム”の火付け役となり、「1日5万本売るパン屋」として多くのメディアで話題となった。芸能人にも愛好家が多く、元雨上がり決死隊の宮迫博之、SPEEDの上原多香子、俳優の哀川翔らがお気に入りだと公言していた。最盛期(さいせいき)には全国で200超の店舗を運営し、行列ができた。

 ブームがピークを迎えた2019年、創業者らは持株会社乃が美ホールディングス(HD)の株式のおよそ半数を投資ファンド「クレアシオン・キャピタル」に売却。それ以降、クレアシオンが乃が美HDに役員を送り込んでいる。

「クレアシオンの先導で乃が美HDは上場(じょうじょう)を目指すことに。そのため、一時は店舗従業員の増員など拡大路線を直走り(ひたはしり)ました」(乃が美関係者)

 だが、ブームに翳りが見え始めた頃にコロナ禍に突入。自粛ムードも相まって客足が遠のき、業績は一気に下降した。そんな中で顕在化したのが、FC店舗のオーナーと本部の対立だった。

 冒頭の現役オーナーが明かす。

「乃が美の店舗の大半はFCで直営店は少ない。店舗で売上が激減して赤字に陥る中、オーナーたちは〈売上の10%〉というロイヤリティの引き下げを求めてきましたが、本部はほとんど応じてきませんでした。また、上場を目標にした拡大路線を捨てきれなかったため、私たちが人件費圧縮などを提案しても本部はなかなか首を縦に振ってくれませんでした」

乃が美-01.png

 「週刊文春電子版」はこれまで2回にわたり、乃が美内部で起きている“異常事態”を報じてきた。昨年12月1日配信の記事では、「ほぼ全てのFC店舗で赤字になっており、このままでは自己破産するしかない」というオーナーの悲痛な告白を報道。今年3月25日配信の記事では、一向に店舗の売上が上向かない中、今年1月に複数のオーナーが連名で、ロイヤリティの引き下げを求める「要望書」を内容証明で本部に送付したこと、これに対し本部は要望書に名を連ねたうちの一部であるFC6社に対して契約解除を通告する形で対抗したことなどを詳報した。

「この時からオーナーたちが結束してロイヤリティの支払いを止めました」(前出・現役オーナー)

「週刊文春電子版」はこれまで2回にわたり、乃が美内部で起きている“異常事態”を報じてきた。昨年12月1日配信の記事では、「ほぼ全てのFC店舗で赤字になっており、このままでは自己破産するしかない」というオーナーの悲痛な告白を報道。今年3月25日配信の記事では、一向に店舗の売上が上向かない中、今年1月に複数のオーナーが連名で、ロイヤリティの引き下げを求める「要望書」を内容証明で本部に送付したこと、これに対し本部は要望書に名を連ねたうちの一部であるFC6社に対して契約解除を通告する形で対抗したことなどを詳報した。

「この時からオーナーたちが結束してロイヤリティの支払いを止めました」(前出・現役オーナー)

「このままだと多くの店舗が消滅しそう」

 対立を深めていく本部とオーナー。そして今、両者の“泥沼内紛劇(どろぬまないふんげき)”は新たな局面を迎えている。冒頭の通り、5月に入って本部がさらなる手段に打って出たのだ。

 小誌は乃が美HDの代理人弁護士名でオーナーらに出された5月12日付の〈通知書〉という書面を確認。そこにはこう書かれている。

〈乃が美の度重なる(たびかさなる)催告(さいこく)にもかかわらず、FC契約に基づくロイヤリティ等の支払いを遅滞し(ちたいし)、本書送付時点まで支払(しはらい)がありません〉〈支払期限(※この通知が届いてから7日以内)までに支払がなされない場合、(略)同契約を解除し、(略)未払金全額の請求について法的措置をとることも辞さない所存です〉