夜ふけのなわとび 第1813回 2023/10/06
意外なつながり
最近ちょっと驚いたことがある。
加藤鮎子(かとう あゆこ)こども政策担当大臣、キレイで頭のよさそうな女性だなあと思っていたら、バツイチで前夫(ぜんぷ)が宮崎謙介((みやざき けんすけ)さんという人だと。
宮崎謙介……。
聞いたことがあるような名前だ。そうあの宮崎さんではないか。衆議院議員時代、男性国会議員として初めて育児休業をとるとかで拍手を浴びたが、奥さんの入院中に不倫をしたことが週刊文春で報じられ、辞職したあの方。そしてその奥さんが、テレビのコメンテーターとなっている金子恵美((かねこ めぐみ)さん。宮崎さんは、美人の自民党女性議員2人と結婚していたことになる。
なんか、これ、すごくないか。
前の配偶者が意外な人だったりすると、人はとても興奮する(私だけか)。
実はまわりでもそういうことがいっぱいあるが、なかなか名前が出せないのがつらいところである。
もうお二人とも故人となっているので、お名前を出させていただくと、20年ほど前、私は田中宥久子((たなか ゆくこ)さんという美容家と親しくなった。田中さんの考案した造顔(ぞうがん)マッサージは、ぐんと若返ると大変なブームとなったものである。思い切り力を込めて、顔の筋肉を上げていくものだ。田中さんから直弟子として丁寧な指導を受けたが、ちゃらんぽらんな私は、田中さんが亡くなられたらすぐにやらなくなった。今でも熱心に続けているのが黒柳徹子((くろやなぎ てつこ)さんで、あの若さの秘訣である。
その田中さんの別れたご主人が、東急文化村元社長の田中珍彦(うずひこ)さんだとわかった時は、みんなが大層驚いた。あの文化村を創り上げ、中村勘三郎さんの「コクーン歌舞伎」を始めた有名な方だからだ。
知り合いの一人は、
「それぞれによく知っていたが、“田中”というありふれた苗字なので、結びついたのはかなりたってから。本当にびっくり」
と語っている。
どちらも違う分野で名をなしたクリエイターで、とても素敵なお二人であった。
この方々のように有名人ではないが、私のまわりの編集者たちも、くっついたり別れたりが激しい。新しく担当になり、とても気が合うA社のB子さんが、週刊文春の私の担当者だったCさんと同棲していた……などという話はよくあること。うっかりワルグチも言えない。
ある雑誌の編集部では、ダンナさんと奥さん、その元奥さんの3人が在籍していたこともあったそうだ。
このページでも一度書いたことがあるが、某新聞社で連載をすることになった時、担当の女性記者が私のところに挨拶に来て言った。
「ハヤシさん、主人の結婚披露宴に来てくださったそうでありがとうございました」
はて、どういうことであろうか。やがてわかった。彼女の夫は、かつての私の担当者と結婚していたのである。担当者だった彼女が週刊誌の部署にいた時、確かに結婚披露宴に出てお祝いのスピーチをした。3人とも同じ新聞社に勤めているため、ややこしいことになるのである。 AIと仏像
さて、週末は初秋の岐阜・高山へ。私が参加している文化人の団体、エンジン01のシンポジウムがあるのだ。昨年岐阜市でエンジン01のオープンカレッジを開催したところ、とても評判がよかった。そのため、今度はぐっと少人数でやるエンジン02を高山で、ということになったのである。
名古屋から特急ひだに乗り換え2時間と少し。美しい緑を眺めていると、アナウンスが始まる。かなり若い声。
県立岐阜高校ESS部の生徒が、英語であたりの観光案内をしてくれるのだ。とても綺麗な発音で、後ろの外国人の夫婦は、「おお」と喜んでいた。
話は変わるようであるが、最近新幹線の英語アナウンスの向上は驚くばかりである。コロナ前は、それこそカタカナでふりがなをふって読んでいるのかと思うほどであったが、最近はとてもなめらか。おそらく業務の傍ら、一生懸命練習なさったのであろう。頭が下がる。
岐阜高校の生徒さんのアナウンスを聞きながら高山駅に到着。ここを訪れたのは今から十数年前であるが、大きな建物が随分増えた。大きなスーツケースを持った外国人旅行者もいっぱい。高山は今、大変な人気観光都市になっているのだ。
その日さっそくオープニング・シンポジウムが行われた。「文化の力でウェルビーイングってナンヤローネ?」。私はすぐに後悔した。
落合陽一さん、勝間和代さん、茂木健一郎さん、日比野克彦さんらの話に全くついていけなかったからである。彼らはAIによって創り出される文化を語り出す。
「いまスタンフォードでは、ナンタラカンタラの価値を高める実験が流行ってるんですよ」
「ナンタラカンタラが、それは既に実証済みだと発表しています」
そのうち、今、落合さんがやっている高山での展覧会の話になった。
「あれは絶対に見た方がいいですよ。本当に素晴らしいから」
ということでさっそく行ってみた。昔の豪商の邸宅が、民藝館になっている。AI技術でつくった茶碗が、骨董品と並んでいるのが、本当に面白い。
ど肝を抜かれたのは、これまたAIで創った仏像。生成AIの文字データから二次元、三次元データを起こすという解説だが、どういうことかまるでわからない。テレビのキャスターをしている落合さんは、それこそトガったファッションでキメているが、礼儀正しく優しい青年である。アナログの年寄り(私のこと)の傍で、ひとつひとつ親切に説明してくれる。
ところで、落合さんのお父さまは、あの落合信彦さん。世界を舞台に力強いドキュメンタリーを描き続けてきた方。夫婦やカップルもいいが、こういう意外な親族というのも、私の好奇心をそそるのである。なんかすごいなあ、と心から思う。