ストレス軽減法 女を見習え(みならえ)
ツチヤの口車 第1275回 土屋 賢二 2023/01/13
男より女の方が長生きする。一つには、女の方がストレスが少ないからだ。なぜストレスが少ないのか。
以下はわたしの仮説である。なお、わたしの女性観は、きわめて少数の女性をもとに誇張(こちょう)と偏見(へんけん)と歪曲(わいきょく)を加えたものだ。
人間だれでも一度は自分を高めようとするが、それに挫折(ざせつ)したときのダメージは大きい。だが女は失敗してもダメージゼロだ。挫折しないからだ。女はエステに行ったり、ダンスを習ったり、服を買ったり、美容院に行っただけで「自分を磨いた」と考えるからだ。
男はまず、自分磨きとは何かを考える。内面(ないめん)を変えないかぎり本質は変わらない。一部の男は、外面(がいめん)にこだわるのは堕落(だらく)だとして、内面の向上を目指し、長い哲学的探究の末に、とんでもない思想に凝り固まってしまう。ちょうどパリに行こうとして、考えすぎて、亀戸(かめいど)に到着するようなものだ。
服装にしても、女のようにファッション誌の通りにすることを拒否する。次のように考えるからだ。
この服装だとチャラい男に見られるのではないか。男は質実剛健(しつじつごうけん)¥でないと軽蔑されるはずだ。一方、真面目な服装だと、誠実一点張り(せいじついってんばり)の面白味(おもしろみ)のない男に見えてモテないだろう。かといって「ちょいワルファッション」などにしたら、「あ〜ら似合いもしないのに気取っちゃって」と女の嘲笑(ちょうしょう)を浴びるに決まっている。
定型的服装(ていがたてきふくそう)なら無難かと思って、アメカジ(アメリカンカジュアル)、ミャンカジ(ミャンマーカジュアル)、キタセンスト(北千住ストリート)、ケニフォー(ケニアフォーマル)などにすると、個性がないと批判される。だが自分のセンスで独自に選んだ服はことごとく女から笑いものにされてきたから、自分のセンスで選ぶこともできない。
より根本的には、そもそも服装にこだわること自体「男のくせに」と軽蔑されるから、「オレは服装には無頓着(むとんちゃく、 むとんじゃく)だ」と思わせなくてはならない。こうして服装は解決不可能な難問になる。
悩みに悩んだ末に選ぶのは決まって、変人(へんじん)にしか見えない奇怪な服装だ。ちょうど不老不死(ふろうふしを求めて艱難辛苦(かんなんしんく)を経た末に、最安(さいやす)のラーメン店を発見したようなものだ。
ダイエットにしてもそうだ。ダイエットは男女ともに挫折するが、男は挫折感と自己嫌悪にさいなまれ、その上、女に「意志薄弱(いしすいじゃく)!」と責められ、大きいダメージを負ってしまう。
女はダイエットに失敗すると、驚いたことに「わたしは意志薄弱だ」とは考えず、「このダイエット法は自分に合わない」と考える。こうして自分に合ったダイエット法を探すが、試すダイエット法は(1)簡単に実行できる(2)すぐ成果が出ることが必要だ。何しろ旺盛な食欲を我慢するのだから、よほどの見返りがなければ納得しない。だから目に見える結果が迅速に出ることを求めるのだ。
そこで「寝るだけ」(もしあれば)「錠剤を飲むだけ」ダイエットを試し、自分に合わないダイエット法が体重とともに増えていく。
ダイエットに限らない。男を見極めるのも迅速だ。女は、男が鼻毛が出ている、決断が遅い、支払いでポイントにこだわる、食べ方が汚い、服装がダサいというだけで、ただちにクズの烙印を押す。この場合、「この男は自分に合わない」と考えるのかと思いきや、たんに「こいつはクズだ」と断定するだけだ。
完璧な男はいないから、やむなく原石を選ぶが、いくら磨いても輝かない石ころだと分かっても、自分の判断を責めることはない。たんに男を責めるだけだ。
【結論】女のように「自分には一点の非もない」という大前提をもてば、ストレスは軽減できる。