THIS WEEK「国際」((のじま つよし、1968年5月 - )2023/11/22
台湾総統選で親中連立結成へ 有力候補“不出馬(ふしゅつば)”に中国の影
突然の「暴走」だった。11月20日から24日までの総統選立候補受け付けを前に、台湾民衆党の総統候補である柯文哲党首が15日、国民党との野党連立協議にサインしたのだ。
台湾の総統選挙は来年1月13日に行われる。4年に一度、台湾の将来を決める場だ。選挙戦は接戦となっている。与党民進党候補の頼清徳副総統が、野党国民党の侯友宜新北市長、第三勢力である民衆党の柯氏、無所属の郭台銘ホンハイ創業者をリードしてきた。野党候補の得票を足せば計算上は頼氏を上回るが、各候補の思惑も異なり、連立交渉は難航していた。しかし、急転直下「連立」が決まった。
総統・副総統の分担を民衆党の求める「世論調査方式」で行うことを拒んで(こばんで)きた国民党だが、長老格にあたる馬英九前総統が「世論調査にもとづき連立候補を立てるべきだ」と表明。これが反響を呼び、馬氏の同席のもと、柯氏と侯氏らが協議の末に、両党が持ち寄った世論調査を総合して結論を出すと決まった。
ただ、各種世論調査で第2位にいた柯氏がなぜ土壇場で連立協議に乗ったのか、不透明さが残った。柯氏が副総統候補に甘んじるような発言を合意直後に行ったことにも台湾では疑念の声があがる。
ライバル民進党の立法委員は「今回の合意はあまりにも不自然。柯の行動はまったく理解できない」と訝る(いぶかる)。身内の民衆党の幹部、支持者にも動揺や不満が広がる。そこにちらつくのは「中国の影」だ。
柯氏は台北市長時代から上海との都市交流を重ねるなど、中国にパイプがあり、民進党の対中政策を批判してきた。
元医師で台北市長も務めた柯文哲氏
そして今回の野党協議の「仲介人」である馬氏は、そもそも国民党の親中派で知られ、総統時代には習近平中国国家主席と会談し、今年4月にも総統経験者としては初めての訪中に踏み切っている。柯氏は何か中国に弱みを握られているのではないかと疑わない方がおかしい。
民進党サイドには「我々の敵は、国民党でもなく、民衆党でもなく、中国共産党だった」(同委員)との受け止め方が広がっている。
15日の米中首脳会談でバイデン大統領は習近平国家主席に「台湾総統選への介入」を行わないようにと発言し、釘を刺していた。野党連立が成立しなければ、中国が忌み嫌う(いみきら・う )民進党勝利の可能性が高い。
ただ、国民党と民衆党の連立は最後の最後で暗礁に乗り上げている。17日の会議で「世論調査の誤差の範囲」をめぐり議論が紛糾(ふんきゅう)。簡単に、2位3位連合が組めるわけではなさそうだ。