極楽征夷大将軍(ごくらくせいいたいしょうぐん)
第169回直木三十五賞受賞作
やる気なし 使命感なし 執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れて(かれて)しまったのか?
動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。 足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。 一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。
混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
担当編集者より
ChatGPTがリリースされ、仕事や生活が激変すると言われています。5年後10年後の世界の姿は誰にも想像できないものとなりました。そのとき、どう生きたらいいのか?
その大きなヒントをくれるのがこの小説です。足利尊氏の話でしょ?関係ないじゃんと思った方、ちょっと待ってください。
尊氏は筋金入り(すじかねいり)のやる気なし男で、自分の家の家督を継ぐのも本気で嫌がって(いやがって)いました。そんな人間が、鎌倉時代末期~室町時代前期の激動期を生き残れるはずがないんです。
何かのきっかけで心を入れ替えたり、急に野心に目覚めたりはしません。徹頭徹尾の覇気のなさ。でも、尊氏は最高権力者にまで上り詰めてしまった。
尊氏のサバイバル術はあまりに単純で、だからこそそれに気づいたとき、目から鱗が落ちました【めからうろこがおちました】。
この小説は頭で理解するというよりは、尊氏の行く道を体験することに醍醐味【だいごみ】があります。是非、尊氏流サバイバル術を体感してください!
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群像劇(ぐんぞうげき)
- 主人公にスポットを当て、それを取り巻く人々という見方で脇役を描くスタイルの劇ではなく、登場人物一人一人にスポットを当てて集団が巻き起こすドラマを描くスタイルの劇 ...
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足利 直義(あしかが ただよし)は、鎌倉時代末期から南北朝時代初期にかけての武将・公卿(くぎょう)・政治家・歌人。鎌倉幕府の有力御家人(ごけにん)足利貞氏の三男[2]。兄に足利高義(あしかが たかよし)と足利尊氏(あしかが たかうじ)がいる。室町幕府初代将軍足利尊氏の同母弟。養子に直冬(ただふゆ)。