2024年10月26日 5時00分

コアラ来日から40年

 丸くてふわふわで大きな耳と鼻。オーストラリアから6匹のコアラが初めて日本に来たのは1984年10月25日だった。友好親善使節として2匹ずつ、東京、名古屋、鹿児島の動物園へ贈られた。コアラまんじゅうが飛ぶように売れたという▼日本へのコアラ贈与を決めるにあたり、豪政府は「パンダを参考にした」と現地の高官から聞いたことがある。日中国交正常化を記念して贈られたパンダは、熱狂的に歓迎された。南半球から来たかわいい使節団も、外交の大役を担っていたようだ▼そのころの日豪関係をみると、70年代半ばまでは鉄鉱石や牛肉の貿易摩擦でぎくしゃくしていた。日豪友好協力基本条約が76年に締結され、文化やスポーツ分野などでも交流が進んだ。コアラ来日もその流れにある▼干ばつや森林火災が頻発する豪州で、生息数の減少が続くコアラは環境問題や自然保護の象徴でもある。先住民の伝説では、コアラをいじめるとひどい干ばつが起きるとされる。のどが渇き、水を盗んで殺された少年が精霊に救われて、コアラに姿を変えたからだと▼この愛らしい姿を眺めていると、友好や平和という言葉が似合うと思う。ユーカリの葉を食べ、木の上で1日20時間ほど眠る。生まれた赤ちゃんは母親のおなかの袋の中で守られて育つ▼40年たった今、日豪間では自衛隊と豪州軍の関係強化など安保分野での協力が急速に進む。背景には中国の存在があるのだろうが、平和のための関係であり続けてほしいと願う。