2024年4月8日 5時00分
「はて」から始まる道
「はて」と首をかしげる寅子(ともこ)に、朝から深く共感している。今月から始まったNHKの連続テレビ小説『虎に翼』の主人公は、古い価値観を押しつけられそうになるたび頭に疑問符が浮かぶ。舞台が昭和ひとけたの戦前だから「はて」の種はそこら中に転がっている▼お見合いの相手から「女のくせに生意気な」と言われたとき。明治民法では妻は「無能力」で、様々な行為に夫の許可が必要だと知ったとき。大学の新設した女子部法科への進学を「女だから」と反対されたとき。寅子は「はて」と漏らす▼日本国語大辞典には「事の成り行きを怪しむ時、戸惑ったり思案したりする時などに発することば」とある。寅子の表情からは不満や反抗など、さらに多様な思いがうかがえる▼室町末期から江戸初期までには使われていた言葉らしく、能狂言(のうきょうげん)の演目「真奪(しんばい)」のせりふにある。刀を奪った男を主人が捕らえた(とらえた)後で、ようやく従者(じゅうしゃ)が男を縛るための縄を拵え始めた(こしらえはじめた)。「ハテ、今から縄をなふて間に合ふ物か」と主人。あきれるという含意(がんい)もあるようだ▼寅子のモデルは女性初の弁護士となった三淵嘉子(みぶち よしこ)さんだ。1938年に司法科試験に合格し、戦後には女性も裁判官にするべきだと司法省に直談判(じかだんぱん)した。後に裁判官になり、女性で初めて家裁所長も務めた▼「初」から80年以上たったが、弁護士や裁判官で女性の比率は2割台にとどまる。政治や経済でもジェンダー格差は縮まらず、平等には遠い。「はて」は、まだまだ続く。
伊藤 沙莉(いとう さいり、1994年〈平成6年〉5月4日 - )は、日本の女優、元子役、ナレーター、 タレント、ダンサー、歌手. Height: 151 cm
猪爪 寅子 いのつめ ともこ 大正3年(1914)五黄(ごおう)の寅年に生まれ、寅子(ともこ)と名付けられる。女学校の卒業を迎えた年、お見合い結婚を勧める母親を振り切って、女性に法律を教える日本で唯一の学校への入学を決意。そこで出会った仲間たちと切磋琢磨(せっさたくま)し、やがて日本初の女性弁護士となる。世間知らずで自信家の所もあるが、全てに全力の人。弁護士として、裁判官として、一歩ずつ成長していく。あだ名は“トラコ”。