2024年4月5日 5時00分

当世ウラガネ回文集

当世ウラガネ回文(かいぶん)集――。自民党の政治資金パーティーをめぐる事件で、1月に立件されたのは、派閥(はばつ)の会計責任者らと一部の議員だけだった。お咎め(おとがめ)なしの幹部が、事情を知らないはずがない。上から読んでも、下から読んでも〈白くて黒し〉▼政治不信の高まりに焦ったのは、岸田首相だ。自ら派閥を解消し、政倫審にも飛び込んだ。なのに、内閣支持率は下がったままで戻らない。頭の中を占めるのは〈人心獲得関心事(じんしんかくとくかんしんじ)〉と、あっさり国民に見抜かれた▼きのうの党紀委員会。〈苦い水飲んだ件(くだん)の罪いかに〉。多くの目が集まるなか、安倍派幹部ら39人が処分を受けた。けれども、やっぱり順序が逆だ。「還流廃止」をやめたのは、本当のところ誰なのか。肝心の点をうやむやに幕を引きたいだけだろう▼多額の不記載なんのその。二階元幹事長は処分をされず。切れば、首相も血を浴びる。〈役得ありあり悪徳や〉▼離党勧告された議員らも、過去にはあっさり復党(ふくとう)している。世論の嵐(あらし))が静まれば、今度も元の木阿弥(もとのもくあみ)だろう。みそぎの選挙で〈勝つまで待つか〉。同じことを繰り返すのは、回文の中だけにしてほしい▼不満を抑えて下した決断。これで支持率も浮上はせぬかと、岸田首相は願うのだろうか。誰かの声が聞こえてくる。いやいや、こんな処分や説明で〈内閣浮くかいな〉――というわけで、島村桂一著『さかさコトバ回文遊び大事典』などを参考にした当世ウラガネ回文集。第2集の必要ない、まともな政治を。

「元の木阿弥」という成句に登場する人名。由来には諸説ある。

みそぎ 03【禊】 (名)スル ① 海や川の水で体を清め,罪や穢(けが)れを洗い流すこと。