2024年4月29日 5時00分
だれのため、何のため
また女性に押しつけるのか。民間研究機関「人口戦略会議」が公表した分析結果に正直、げんなりした。指標としたのは、20~39歳の若年女性人口の減少率だけ。ショック療法だとわかっていても、744もの「消滅可能性自治体」の根拠に使われたようで落ち着かない▼少子化が進むのは、子どもを産む年齢の女性人口が減るためだ。だから自治体は、この層を減らさない対策を講ずるべきである――。分析を要約すれば、そういうことになる。同じ日本で、出産する女性を取り合うかのようだ▼子どもは女性だけでは生まれない。少子化の最大の原因は、男女の晩婚化と非婚化にある。しかも、生涯未婚で過ごす人の割合が増える「非婚化」の傾向は、とりわけ男性に目立っているという(佐藤龍三郎ら編著『ポスト人口転換期の日本』)。だが、今回の分析には男性は含まれない▼「またか」の感が強いのは、もう何年も少子化で似たような政府の押しつけを見てきたからだ。子育て支援をうたった「エンゼルプラン」、足りない労働力を補うための「女性活躍」、出生率アップへの期待がにじむ「異次元」等々▼決定的に欠けているのは、女性の視点や声ではないか。人口減を語る指標は他にもある。家事や子育てを平等に分担できる働き方や男女の賃金格差の解消など、政策で変えるべきものは多い▼そもそも女性は、子どもを産むためだけに存在しているのではない。「個人」の幸せのために、生きたいように生きたいのだ。