2024年11月12日 5時00分
開かれた国会のために
「さあ、カーテンを開けて太陽の光を入れよう。より開かれた議会にしましょう」。豪州で14年前、与党・労働党を率いたジュリア・ギラード首相は記者会見でそう呼びかけた。総選挙で与野党とも単独過半数に届かず、70年ぶりの「宙づり議会」になっていた▼無所属議員らの協力でギラード氏が政権継続を決めたのは選挙の17日後だ。厳しい議会運営が予想されたが、密室と呼ばれた議会や党を「透明化する」と約束し、メモなしで野党党首と丁々発止の議論を繰り広げた▼こちらの「宙づり」はどうか。きのう、特別国会が開会した。連立与党が過半数に満たず、決選投票で石破茂首相は無効票に助けられた。これを機に、形骸化(けいがいか)した審議を変えてもらいたい▼官僚が作った答弁資料をただ読み上げる代表質問。会期末(かいきすえ)には野党の反対を押し切り、強行採決で法案を成立させる。野党も法案を廃案に追い込むための日程闘争くらいしか見せ場がない。原因の一つは、自民党が続けてきた「事前審査」である▼内閣作成の予算案や法案を、国会(こっかい)提出前に党の政務調査会などで審査してしまう。法的な根拠はなく通説(つうせつ)では1962年の党幹部による書簡が起点とされるが、もっと前からあったとの見方も(『自民党政治の源流』)▼民主主義で大切なのは結論に至るまでの過程だが、事前審査では国民に見えない。少数与党の現状で、野党との交渉なしでは法案も通らない。いまこそカーテンを開けて、活気あふれる国会にして欲しい。