2024年11月5日 5時00分
34万人の不登校
私の場合、中学生のときだった。もう学校になんか、行きたくないと思った。みんなと一緒に教室にいても、何だか自分だけ宙に浮いているような気がした。独りぼっち。そんな言葉がギュウギュウと胸をしめつけ、悲しく、苦しかった▼そのころ、かなり背伸びをして読んだ本の一つは、哲学者の三木清(みき きよし)が著した『人生論ノート』だった。「孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の『間』にある」。布団に丸まり(まるまり)ながら、知った。集団のなかにこそ、ひとは孤独を感じるものなのだと▼いまも、そんな悩みを抱えている子がいるのだろう。不登校の小中学生が、過去最多(さいた)の34万人に上ったという。いじめも過去最多で、小中高校で73万件が報告されたそうだ▼一人ひとり、異なる事情があるのだろうから、決めつけるようなことは言いたくない。ただ、不登校の要因について、「やる気(やるけ)が出ない」といった相談が最も多かったと文科省は説明する。これはやる気の問題なのだろうか。素直に頷けない(うなずけない)▼そもそも、学校とは何なのか。みんなが同じ方向を向いて座り、何かと規則でダメと叱られる。勉強といっても、決められた答えばかりを求められてはつまらない。楽しい思い出もあるけれど、もう一度行きたいかと問われれば、迷ってしまう▼人生は旅である。自由な旅である。中学生の私は、魯迅(ろじん)の言葉にも助けられた。「もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」