2024年11月4日 5時00分

「伝統的家族観」とは

 結婚するときに、夫婦がそれぞれの姓を選ぶ。同姓でもいいし、改姓が嫌なら別姓を選べば良い。どちらを否定するものでもないのに、なぜ実現しないのか――。選択的夫婦別姓制度の導入を求める人たちからよく、こんな疑問を聞く。確かに、誰の不利益も生じないように思える▼国連の女性差別撤廃委員会は先月、制度導入を求めて4度目となる勧告を出した。経団連も今年、早期実現を提言した。それでも導入できないのは、自民党議員らの強い反対があるためだ。理由は、「伝統的家族観」や「家族の一体感」が損なわれるからだという▼まず、家庭内で異なる姓が使われると「家族の絆が壊れる」。すると、「家族単位で保たれてきた社会が崩壊する」。さらに「戸籍の廃止につながり、制度などの見直しを迫られる」との主張まである。親と姓が違うと「子どもがかわいそうだ」とも▼まるで、戦後の民法改正でなくなったはずの「家制度」を見るようだ。導入反対は、日本会議や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)など、保守系団体の意向でもあるという▼「伝統」でいえば、夫婦同姓の起点となったのは1898年の明治民法で、130年もたっていない。江戸時代は多くが公式な姓を持っていなかったが、家族に「一体感」がなかったとは思えない▼仕事上の不便さや自己喪失感など、別姓を望む理由は多様だ。日々の不都合を解消するのも大事だが、根っこには凝り固まった価値観がある。変えなければいけない。