2024年6月23日 5時00分
沖縄慰霊の日に思う
惨劇は79年前、米軍が沖縄本島に上陸した次の日に起きた。海岸から幾許(いくばく)の距離もない読谷村(よみたんそん)の小さな谷底(たにそこ )でのことである。チビチリガマと呼ばれる洞窟に隠れた140人ほどの住民のうち、83人が火を放つなどして命を絶った▼亡くなった人の名前と年齢を『読谷村史』に見る。比嘉幸次郎(ひか こうじろう)さんは11歳だった。大城スエ子(おおしろ すえこ)さんは8歳だった。知花吉春(ちばな よしはる)さんは3歳だった……。「集団自決」といっても、死者の6割は18歳までの子どもらである▼なぜ、こんな惨い(むごい)ことが起きたのか。「日本軍が中国人を虐殺したのと同様に、今度は自分たちが米軍に殺される」。中国戦線(ちゅうごくせんせん)にいた経験を持つ住民の男性はそう考え、ガマのなかで火をつけたという▼旧満州から里帰り中(さとがえりちゅう)の女性が「敗戦国の女性がどんな目に遭うのか」を口にし、自死を勧めたとの証言も残る。「自分で死んだほうがいい、捕虜(ほりょ)になったら虐待されて殺されるんだから」。日本の兵隊が中国で行った残虐な行為が、に裏返ってガマいた人々の恐怖心につながり、自決を促していた▼沖縄で戦った日本の主な部隊が、中国の戦場(せんじょう)から転じた将兵たちだったとの史実もある。被害者か加害者か、民間人か軍人か、そんな境界線がすべてぼやけ、地続きとなって弱き者が犠牲を強いられる。それが戦争なのだろう▼きょうは沖縄慰霊の日。耐えがたい悲惨な歴史を経て、いまというときがあることを、かみしめる。死者が残したことばに目をこらし、ぐっと本気で、噛み締める(かみしめる)。