20424年6月15日 5時00分
ヒップホップ騒動
ヒップホップ文化は禁止する――。そんな政府幹部の言葉が報じられたのは、2018年の初春のことだった。テレビの芸能番組に、ヒップホップの歌手らは出演させてはならぬ、という。もちろん、日本のことではない。お隣、中国の話である▼人気を博した歌手たちが一斉(いっせい)に、中国のテレビから姿を消した。まるで、そんな人物ははなから存在していなかったかのように……。特定の歌の歌詞が問題になったとも言われたが、さすがの中国でも、そこまでやるのかと驚いたことを覚えている▼さて、こちらは日本の話である。東京のある公立中学校で、ヒップホップをめぐる騒動が起きているそうだ。ダンス部の活動内容を、学校側がヒップホップから創作ダンス中心に変更し、部員たちが反発しているという▼おそらく様々な人たちに、多くの問いを投げかける話であるに違いない。学校は生徒たちにどう向き合ったのか。ヒップホップへの偏見はまったくなかったのか。そもそも中学校での部活動とは、如何(いか)なるものであるべきなのか。腕を組んで、考える▼「教育とは、学校で習ったすべてを忘れたあとに残るものをいう」とは、アインシュタインの至言(しげん)である。学校側にも言い分はあろうが、ここは改めて、生徒たちとじっくり話し合ってみるというのはいかがだろう▼中国の話に戻れば、禁止令の報道から数カ月後、なぜかヒップホップはテレビ番組に復活した。隣国の人たちはねばり強く、音楽とダンスを楽しんでいる。