2024年6月26日 5時00分

ナイカクカエタ

 次の首相はだれなのか。沖縄返還を手がけた佐藤栄作(さとう えいさく)首相が退陣を表明すると、4人が名乗りをあげた。三木武夫(みき たけお)、田中角栄(たなか かくえい)、大平正芳(たいしょう まさよし)、福田赳夫(ふくだ たけお) 。それぞれから1字ずつとった「三角大福」の争いである。1972年。勝ったのは田中氏だった▼それから50年。いま「小石河」という言葉を耳にする。小泉進次郎(こいずみ しんじろう)、石破茂(いしば しげる)、河野太郎(こうの たろう)。世論調査で「首相にふさわしい人」の常連は、前回の自民総裁選で連携し、岸田文雄首相と競った(きそった)。秋の総裁選でも再びこの3人が鍵をにぎるのだろうか▼国会が終わるや否や、岸田降ろしの風が吹き始めた。菅義偉(すが よしひで)前首相は、裏金問題での岸田氏の対応について「国民の不信感は多い」と事実上、退陣を迫った。これまで一部の議員があげていた不満を微風(びふう)とすれば、こちらは黒雲(くろくも)をともなった旋風とでも言おうか▼「(総裁選は)党の刷新の考え方(かんがえかた)を理解してもらう最高の機会だ」。そうも語ったという。政治資金制度や子ども政策の財源など、先送りしたテーマについて大い(おおい)に議論は戦わせたらいい(たたかわせたらいい)▼ただ秋まで待たずとも、結果を出す機会はすでに十分あっただろうに。看板がかけ替われば(かわれば)、党も刷新されるという目くらまし(めくらまし)や早合点の危うさは、頭に入れておきたい▼文字を並び替えて、ほかの言葉をつくるアナグラムという遊びがある。たなかかくえい(田中角栄)――ないかくかえた(内閣変えた)。がらりと変わったように見えても、一つひとつは同じ。そんなことも世の中にはある。