2024年8月21日 5時00分
コメの未来は
「お米の供給(きょうきゅう)が不安定となっております。1家族様 2点まで」。東京都内にある近所のスーパーで、コメ売り場にこんな札がかけられてから約1カ月になる。制限をするまでもなく、棚(たな)はほぼ空っぽだ。値上がりも厳しく、5キロの無洗米(むせんまい)で千円近く上がった銘柄(めいがら)も▼大手通販サイトでも「在庫切れ(ざいこぎれ)」が並ぶ。一方で、我が家が利用している米屋さんは「あります。値上げもしません」と頼もしい。各地のコメ農家と直接取引しており、固定客が定期的に買う分程度は確保済み(かくほずみ)だという▼コメはあるのか、ないのか。農水省は「需給(じゅきゅう)は問題ない」とするが、実際に一部で品切れ(しなぎれ)になっている。供給にばらつきがあるのは明らかだ。昨年の猛暑(もうしょ)による品質低下や、訪日客(ほうにちきゃく)の消費増加が指摘されるが、主因にはならないだろう▼そんな折、小川真如(こがわ まさゆき)著『日本のコメ問題』を読み、今回の問題の根が見えた気がした。自給を達成した年や生産調整で「作らせない政策」が本格化した年など、コメ問題を歴史的な転換点から描いていて興味深い▼著者は、「コメを余らせないこと」ばかりに国は関心を寄せてきたと指摘する。生産調整で余った田んぼをどう使うかといった、長期の視点に欠けていたと。コメ余りを避けようとぎりぎりの政策を推し進めたため、小さな変化にも動揺(どうよう)する状況を招いたように思える▼米屋さんから「暑さに強い品種」だと勧められ、土鍋(つちなべ)で炊いた(たいた)。このおいしさを未来に伝えていかなくてはと、お焦げ(おこげ)を噛み締めた(かみしめた)。