2024年8月16日 5時00分
今日はこれぐらいにしといたるわ
よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ――。負けているのに、まるで勝っているかのように平然として言い放つ姿は何とも、おかしい。あの有名なドタバタ漫才の決めゼリフが、どこからか聞こえてくるような気がしたが、はて、空耳だったか▼岸田首相のおとといの会見である。もっともらしく裏金問題のけじめをつけるというが、ならば、もっと早くやめるべきだったろう。総裁選で勝てる算段がたたず、選挙の顔を変えろとの党内の圧力も強い。どうにも立ち行かなくなっての不出馬表明ではなかったか▼防衛費の倍増、原発の最大限活用……。岸田政権は重大な政策の転換に幾つも踏み込んできた。どれもが世論を二分する問題だったが、熟議の民主主義は〈そら、アカンわ〉とばかりにはじき飛ばされた▼結局、岸田氏は何が最もしたくて首相になったのだろう。いまさらながら、そんな疑問も消えない。会見では「政治家の意地」といった表現も出たが、漫才のセリフで言えば〈ちょっとナニ言ってるか分からない〉▼首相は国民の多様な声に正面から向き合わず、国民には首相の声が響かない。「丁寧な説明」「真摯(しんし)な受け止め」といった決まり文句は多用されすぎ、もはや意味をなさない。まるで〈ごはんがススムくんやないか〉▼それでも自民党は看板の掛け替えで、次の選挙に勝とうという考えらしい。何を言われても〈ほな、もう一軒いこかー〉ということか。下手な漫才も、ほどほどにしていただきたい。