2024年2月23日 5時00分
バブル以来の株価更新
洋画の幕開け(まくあけ)といえば、思い浮かぶシーンがある。ライオンが咆哮(ほうこう)したり、地球がぐるりと回ったり。米映画会社の「顔」である。トーチを掲げた女性もその一つだ▼彼女が和服を着てニューズウィーク誌の表紙に登場したことがある。1989年、コロンビア・ピクチャーズをソニーが買収した時だ。記事は「米国の魂を日本企業が買った」。直後には三菱地所(みつびしじしょ)がロックフェラーグループを買収し、ジャパンマネーの勢いはとどまるところを知らなかった▼日経平均株価が史上最高値をつけたのは、その年末のことである。きのう終値(おわりね)が3万9千円台となり、じつに34年ぶりの更新となった。職場の同僚は「私が生まれた年以来ということですね」と言う。長い長いトンネルを抜け、ようやく日本経済にも春の日が差した、と言っていいのだろう▼ただ米国やドイツではこの間に、株価は当時の10倍(じゅうばい)にもなっている。考えてみれば、こちらは携帯電話どころかパソコンも普及していない前時代(まえじだい)の株価に戻っただけ、とも言える▼バブルの頃と違って、好景気の実感も乏しい(とぼしい)。安さを売りにした100円ショップはいつもにぎわっているし、東京・銀座でも終電の前には、みな足早(あしばや)に帰り始める。つまりは消費の動きがにぶい。本格的な成長につながるのかどうか、ここからだろう▼ならばこの際、やむを得まい。今日だけでも、わが家の晩酌(ばんしゃく)をもう1本増やそうか。何といっても、それが日本経済のため――いやあ、いまから喉(のど)が鳴る。