2024年2月16日 5時00分

句点の流儀

 ずっと使ってきたのにひどいじゃないですか。句点(くてん)に言葉が話せたら、そう訴えるかもしれない。若者世代はSNSのメッセージで句点を「冷たい」と感じるという。「大丈夫です。」のように付けると「マルハラスメント」だとネットで話題になっていた▼筆者は50代だが、スマホの履歴を確かめたら若者あてでも普通に句点を付けていた。相手の文には一切ない。これが世代間ギャップかとショックを受けた。日本だけの現象なのか気になったので、欧州や東南アジア、南米の知人に聞いてみた▼どうやら「句点なし」は、他言語圏にも共通する傾向のようだ。20代の英国人女性は「メッセージの吹き出しには必要ない。送信ボタンを押すのが句点の代わりだ」と話す。冷たい、権威的、機嫌が悪いなどの印象は日本と同じ。文末(ぶんまつ)は句点なしか、ダッシュ(―)が多いという▼感嘆符(!)の文末も20代の彼女には好印象だが、10代には圧を感じて不評だとか。改まったメールや上司から来たメッセージの返事には「真剣さや正式な感じを出すため」に句点を付けるそうだ▼大類雅敏(おおるい まさとし)著『句読点おもしろ辞典』に、いまから半世紀ほど前の興味深い話があった。高名な国語学者が、目上の人への手紙で句読点を使うと失礼になると説いた。読みやすいようにと指示する行為だからだ▼礼儀だとか失礼だとか、毀誉褒貶(きよほうへん)にさらされる句点が気の毒になった。日々世話になっている身としては、これまで通りに使っていこうと思う。以上。