2024年2月4日 5時00分
椿餅と源氏物語
きょうは立春(りっしゅん)。近所の和菓子屋さんに椿餅(つばきもち)があった。丸いもちの下に、ツバキの葉が1枚。上にかぶせたもう1枚が、頭に葉っぱを乗せたタヌキのようで愛嬌(あいきょう)がある。桜もちのようにくるまず挟んだのは、葉に厚みがあるからだろう▼椿餅の歴史は古く、千年以上前に書かれた源氏物語に登場する。3月ごろの空が麗らかな(うららかな)日、光源氏(ひかるげんじ)が住む六条院で殿上人たちが蹴鞠(けまり)をした。楽しんだ後で若者たちが敷物に座り、椿餅や果物をはしゃぎながら食べる様子が描かれている▼当時は椿餅を「つばいもちい」と読んだようだ。いまの椿餅にはあんが入っているが、平安時代は植物の汁を煮詰めたもので、もちに甘みをつけたという。文献上で確認できる最も古い「和菓子」の一つとされているとか▼源氏物語(げんじものがたり)のすごさは、いまも語り継がれるだけでなく、ブームを繰り返していることだ。大和和紀((やまと わき、1948年3月13日(75歳))さんの漫画『あさきゆめみし』の連載開始は45年前。その20年ほど後には、瀬戸内寂聴((せとうち じゃくちょう、1922年〈大正11年〉5月15日 - 2021年〈令和3年〉11月9日))さんの現代語訳がベストセラーになった▼先月始まったNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公は紫式部だ。図書館の棚をのぞくと、すでに源氏ブームかと思うような顔ぶれになっていた。与謝野晶子((よさの あきこ)らの訳のほか、「はじめて読む」などのガイド本。フェミニズム視点で読み解く、脇役に光を当てるといった関連本も▼源氏物語の魅力は様々なタイプの人が登場し、現代でも感情移入できることだと思う。椿餅の場面にもしっかり禁断の恋が描かれている。
ひかるげんじ 【光源氏】 源氏物語の主人公。桐壺帝の第二皇子。母は桐壺の更衣(こうい)。光君。源氏の君。源氏の大将。