2024年9月20日 5時00分
深センの悲劇
どうか、命はとりとめてほしい。多くの人の願いを打ち砕く知らせが、きのう届いた。中国・深圳(シンセン)。日本人学校へ通う途中で男に刺された児童(10)が、亡くなった。何の罪もない子が、なぜ。やりきれぬ思いでいる▼現場の写真を見れば、濃い緑がまず目に入る。学校から200メートルほどの路上だという。校門に近づくうちに、級友たちの顔が浮かび、歩みは自然と軽くなる。そんな登校風景だったのでは、と想像する。許されざる凶行(きょうこう)だ▼男の動機について中国側の説明がない以上、臆測をふりまわすことは避けたい。ただ、6月には蘇州(そしゅう)でも、日本人学校のスクールバスが襲われている。同じような構図の事件がつづくのは何故なのか。一線を越えることを厭わない(いとわない)何かが広がっているのか▼しかし、金杉憲治(かなすぎ けんじ)・駐中国大使によれば、どちらの事件についても、中国から「満足できるような説明は聞いていない」という。それでは、不安と不信がふくらんでしまうばかりだ▼中国のSNSには事件のあとも、歴史問題を背景に、反日感情をむき出しにした意見が見受けられる。統治の歪(ひずみ)を、愛国教育という名のナショナリズムで覆い隠す。その行きつく果てだろう。こちらは、同じような愚(ぐ)はおかすまい▼事件の現場にきのう、花束(はなたば)がそなえられた。持参した地元の中国人の男性(54)は話す。「歴史を忘れてはいけない。だが男のしたことは犯罪行為だ。私は中国人として非難する」。そういう声があることを忘れてはならない。
18日午前、中国 広東省の深センで日本人の10歳の男子児童が保護者と一緒に日本人学校に登校していたところ、男に刃物で刺され、病院で手当てを受けていましたが19日未明に死亡しました。