2024年9月21日 5時00分
オノマトペにきゅんきゅん
ものの音や状態などを表す擬音語・擬態語(オノマトペ)は外国語にもある。南欧のバスク語で「グルカグルカ」とは、水などを飲む時のごくごくにあたるそうだ。インドネシアのカンベラ語の「ンブトゥ」は、重い物が落ちた音。日本語ならば、どさりだろうか。今井むつみ、秋田喜美(あきた きみ)著『言語の本質』に教わった▼全く知らない言語なのに、音の響きから何となく雰囲気は伝わってくるのがおもしろい。名は体(からだ)を表す。ウサギとヘビの写真を並べ、どちらが「もふもふ」しているかと外国の人に聞いたら、意外と正解率は高いのかもしれない▼動物の毛などが豊かでやわらかい触り心地であるさま、とデジタル大辞泉は説く。2000年代に生まれた表現だ。文化庁の「国語に関する世論調査」で、52%が「もふもふ」を使うことがあると答えた。もはや定着したといっていいのだろう▼三島由紀夫は、こうしたことば遣いに厳しかった。抽象性がなく、子どもや女性の文章に多く、言語本来の機能をもたない堕落(だらく)した形だ、と『文章読本』でやっつけている。どうも意見があわない▼冒頭の本が、オノマトペの弁護士役を買って出ている。他のことばと同じように、時代で意味が変わり、新たな表現も生み出せる。「一人前の言語の一員」である、と▼例えば「きらめく」も「よろける」も、もとはオノマトペだった。これから先、どんな新しいことばが日本語に登場するのか。きょろきょろ、どきどき、にやにやしながら見守る。
オノマトペ 3フランス•onomatopée 擬音語・擬声語・擬態語を包括的にいう語。