2024年9月19日 5時00分

総裁選で語られないもの

 自民党総裁選の候補者9人による演説会が、各地で開かれている。おとといの那覇市の会場では、ご当地へのアピールなのか、全員がかりゆしウェアで登壇した。多くは外相(がいしょう)や防衛相(ぼうえいしょう)、官房長官などの経験者だ。さて基地問題で何を語るのか――と、やや期待したのが浅はか(あさはか、silly, foolish)だった▼「辺野古」という言葉を口にしたのは石破茂(いしば しげる)氏だけだった。米軍基地のある神奈川県横須賀市生まれの小泉進次郎氏は「基地という存在を逆手にとって、みなさんの生活を向上させたい」。基地を前提にした街づくりを、と言いたいのだろうか▼沖縄県内で、米軍関係者による性犯罪は今年すでに4件にのぼる。上川陽子(かみがわ ようこ)氏は「性暴力は二度と起こさせない。厳しい姿勢で臨みます」と語った。外相なのだから、そのつもりならば、いまおやりになるのが良かろう▼自民党にはかつて日米地位協定の改定をめざす議連があり、地方自治体の代表を日米合同委員会に加えるなどの案をまとめた。議連幹事長だったのは河野太郎氏。だが、最近はすっかり鳴りを潜めている。登壇者の発言で、基地負担の軽減策を具体的に挙げたものは、ごくわずかだった▼総裁選は、きょうで折り返しとなり、今後も討論会などがある。この国には多くの課題があり、おまけに候補者も少なくないのだから、限られた時間の中では言い尽くせない、というのも一理あろう▼だが政治の本性はときに、何を語るのかよりも、何を語らないのかに現れる(あらわれる)。耳をそばだてておきたい。

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