2024年9月14日 5時00分

楽しい科学

コップとストロー、調味料入れの柔らかいボトル、スポンジ、クリアファイル。この材料で「人の声が出せる装置」が作れると聞き、国立科学博物館で開かれた「音の科学教室」を訪ねた。集まった約20人の大半は小学生だ▼ストローを斜めにカットして、切り口に小さな楕円(だえん)形のファイルを貼る。それをコップに差し込み、スポンジを詰めたボトルと合体させれば完成だ。コップに強く息を吹き込みながらボトルをにぎって形を変えると、アー、ウーと「声」のような音が出た。これは面白い▼器用に音を操る子がいる一方で、「うまくいかない」と考え込む子も。指導役の工学院大准教授、高橋義典さん(45)から指摘されて、ストローの部分を直した。今度はブーッと大きな音が出て、見ている方もほっとした▼人の声が出る仕組みも学んだ。肺から空気が送られ、声帯で音が作られる。その音が、のどや口腔(こうくう)、鼻腔(びくう)の声道で響き合って声になる。ストローは声帯、ボトルは声道だったのだ。理科好きだという男の子が「すげーな、人間」と感心していた▼日本時間の昨日、独創的でユニークな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」が発表され、日本人が18年連続で受賞した。わいわいと楽しそうな授賞式の映像に、科学教室で盛り上がっていた子どもたちの顔が浮かんだ▼「面白さ」が注目されるイグ・ノーベル賞だが、実はまじめな研究が受賞する例も多い。声の装置をきっかけに科学者になった――。ふと、そんな夢を見る。