2024年9月13日 5時00分
消えない疑念
ーパーの店頭に、6種類のジャムを並べた机と24種類のジャムを並べた机を置いた。6種類の時に試食した客は30%が買ったが、24種類では3%しか買わなかった。選択肢が多いと、逆に選べない。米コロンビア大のシーナ・アイエンガー教授による「ジャムの法則」だ▼消費者心理と政治選択が別なのは承知の上だが、こんなにいると選ぶのが大変そうだ。自民党総裁選で、過去最多の9人が立候補を届け出た。裏金事件や旧統一教会との関係で、党へ向けられた視線は厳しい▼危機に瀕(ひん)した信頼を回復させねばと、9人にはさぞ覚悟が必要だっただろう。権力欲だけで首相になりたいとか、知名度を高めるために名乗りを上げた人はよもやいまい。派閥の縛りがない党内で存在感を高めようと、だめもとで立った人もいるわけがない▼ましてや「9人いるから負けても傷は浅い」などと考えている人は皆無のはずだ。政策もばらまきではなく、財源まで考え抜いたものなのは当然だ▼でも、なぜだろう。どうしても疑念がわいてくる。本当に党改革のため、真摯(しんし)に取り組むつもりなのか。派手なポスターまでつくった党は、もうすぐあるらしい総選挙の「顔選び」と思ってないか。この場をPRに使おうという打算はないかと▼総裁選で投票できる党員・党友は100万人あまりだという。冒頭のジャムの研究をした教授は、小紙の取材にこう語っている。「選択とは、将来と向き合うこと」。9人にしかと耳を傾け、見極めたい。