2024年3月27日 5時00分

メモなしの通訳

 何も足さず何も引かずに訳して、透明な存在に徹しなさい。アルバイトで英語の通訳をしていた学生時代、指導役によく注意された。話の最中に驚いたり動揺したりすると、顔や態度に出る癖があったからだ。相手の目障り(めざわり)になると指摘されるたび、この仕事の難しさを痛感した▼「同時通訳の神様」と言われた國弘正雄(くにひろ まさお)氏にあこがれ、手紙を出したこともある。思いがけず返事が来て「しっかり基礎の習得を」と励まされたが、彼が重視した頭の回転の速さも大胆さもない。結局は挫折した▼大リーグ・ドジャースの大谷翔平(おおたに しょうへい)選手の専属通訳だった水原一平(みずはら いっぺい)氏が、違法賭博(とばく)に関与した疑惑で解雇された。きのう、声明を出した大谷選手は「うまく言葉では表せないような感覚」と述べた。長く身近にいただけに心中は複雑だろう▼大谷選手の横に座った別の通訳をテレビで眺めていてふと思った。そういえば正式な会見の場でも、水原氏がメモを取る姿を見たことがなかったと。通訳の訓練では「数字や固有名詞はメモしろ」と教えられたものだが、記憶力が抜群だったのか▼米メディアの長めの質問もすらすら訳し、時には意訳で「足し引き」もした。けがで動けなければ食料品を届け、リハビリにも付き添った。オールスター戦前日の本塁打競争では捕手役まで務めた▼その役割は通訳の範疇(はんちゅう)をはるかに超えていた。メモなしの通訳は、強力な信頼関係から来る自信もあったのかもしれない。天職に見えた仕事は、唐突に終わった。


水原一平賭博事件の記者会見.png

米大リーグのドジャースに所属する大谷翔平選手は25日(日本時間26日)、通訳の水原一平氏の違法賭博問題について報道陣の前で自らコメントを発表した。全文は以下の通り。

チームの関係者やファンにとっても厳しい一週間だった。みなさんに我慢とご理解をいただけたのはありがたかった。

まず、僕自身も信頼していた方の過ちを悲しく、ショックに感じている。現在進行中の調査もあるので、今日話せることに限りもあることもご理解いただきたい。詳細をまとめたメモがあるので、これにしたがって何があったのか説明させていただく。

まず始めに、僕自身は何かに賭けたり、誰かに代わってスポーツイベントに賭けたり、またそれを頼んだことはない。僕の口座からブックメーカー(賭け屋)に対して誰かに送金を依頼したこともありません。本当に数日前まで、彼(水原氏)がそういうことをしていたというのもまったく知りませんでした。

結論から言うと、彼(水原氏)が僕の口座からお金を盗んで、なおかつ周囲にもウソをついていたということだ。

まず先週末、(試合のあった)韓国で僕の代理人に対し、メディアからスポーツ賭博に関与しているのでないかという問い合わせがあった。

一平さん(水原氏)は僕にこうした取材の依頼があったことを話していなかったし、連絡もなかった。(大谷選手の)代理人には、友人の借金の代理として(金銭を)支払ったと話していた。

その翌日の尋問で、一平さん(水原氏)は僕たちの代理人に対し、借金は自身がつくったものだと説明した。それを僕が肩代わりしたという話をしたが、これらはまったくすべてがウソだったということ。

一平さん(水原氏)は取材依頼のことを伝えていなかったし、代理人の人たちにも、チームにも、(大谷選手とは)コミュニケーションを取っていたとウソをついていた。

僕がこのギャンブルについての問題を知ったのは韓国の第一戦の後のチームミーティングの時です。ミーティングは英語で話していたので、完全には理解できておらず、おそらくこういう内容だろうなということは理解できたが、何となく違和感があった。

そのとき彼は僕に対し「ホテルに帰った後で、より詳しいことを二人で話したいので待ってくれ」と言ったので、待つことにした。

一平さん(水原氏)がギャンブル依存症だということも知らなかったし、彼が借金をしていることもミーティングの時まで知らなかった。僕は彼の借金返済に同意したこともないし、ブックメーカーに対しての送金に同意したこともない。

試合後ホテルに戻り、一平さん(水原氏)と話をして、彼に巨額の借金があることを知りました。その時に僕の口座に勝手にアクセスして、ブックメーカーに送金したということを伝えられた。

僕はやはりおかしいと思い、代理人(だいりにん)を呼んで話し合いました。話が終わり、僕も代理人も、彼にウソをつかれていたことを知って、ドジャースの関係者や弁護士に連絡をした。

ドジャースの関係者や代理人も、その時初めて自分たちがウソをつかれていたということを知りました。弁護士たちは「これは窃盗と詐欺なので警察の当局に引き渡す」という報告をしました。

これが(経緯の)流れで、僕はもちろんスポーツ賭博にも関与していないし、ブックメーカーに送金していた事実もありません。

まあ正直「ショック」という言葉が正しいとも思わないですし、それ以上うまく言葉では表せないような感覚で一週間ぐらい過ごしてきた。今はそれをうまく言葉にするのは難しいと思っている。

ただ、もうシーズンも本格的にスタートするので、ここからは弁護士の方々にお任せし、僕自身も警察当局の捜査に全面的に協力したいと思っています。

気持ちを切り替えるのは難しいですけども、シーズンに向けてまたスタートしたいですし、今日まずお話ができてよかったなとも思っている。これが今話せることすべてなので、質疑応答はしませんが、これからさらに(調べが)進んでいくと思います。


チームの関係者の皆さん、僕自身もそうですけど、ファンの皆さんもここ1週間ぐらいですかね、厳しい1週間だと思うんですけども、メディアの皆さんも含めて、我慢とご理解をしていただいたのはすごくありがたいなと思っています。

まず、僕自身も信頼していた方の過ちというのを、悲しくというかショックですし、今はそういうふうに感じています。

現在進行中の調査もありますので、今日話せることにまず限りがあるというのもご理解いただきたいなということと、また今日ここに詳細をまとめた、わかりやすく皆さんにお伝えするためにまとめたメモがありますので、そちらの方に従って、何があったのかというのをまず説明させていただきたいなと思います。

まずはじめに、僕自身は何かに賭けたりとか、誰かに代わってスポーツイベントにかけたりとか、それをまた頼んだり、ということはないですし、僕の口座からブックメーカーに対して、誰かに送金を依頼したことももちろん全くありません。

本当に数日前まで彼がそういうふうなことをしていたっていうのも全く知りませんでした。結論から言うと、彼が僕の口座からお金を盗んで、なおかつみんな僕の周りもそうですね、みんなに嘘ついていたっていうのが、結論を言うとそういうことになります。

まず初めに言うと先週末、韓国ですね、僕の代理人に対してメディアの方から、違法なブックメーカーから、僕がスポーツ賭博について関与しているのではないかという連絡ありました。

一平さんは僕にこういった取材の依頼があるということをまず、僕には話していなかったし僕の方にそういう連絡はまず来ていなかったということと、まず初めに一平さんは僕と話してわかったのは、一平さんにではなく、友人の借金の肩代わりとして支払ったというふうに、僕の代理人も含めてみんなに話しています。

その翌日にさらに尋問で一平さんは、僕たちの代理人に対して、借金は自分のものつまり、一平さん自身が作ったものだということを、説明しました。

それを僕が肩代わりしたという話を、そのときに代理人に話したそうです。そしてこれらは全く全てが嘘だったっていうことですね。

一平さんは取材依頼のことも僕にはもちろん、そのとき伝えていなかったですし代理人の人たちに対しても、僕は既に彼と話してコミュニケーションをとっていたっていうことを、嘘ついてました。

僕もそうだし、チームも代理人たちに対しても、僕とコミュニケーションをとっていたっていうふうに嘘ついてました。

そして僕がこのギャンブルに関しての問題を初めて知ったのは韓国での第1戦が終わった後に行われたチームミーティングのときです。

そのミーティングで彼は全部英語で話していたので、僕に通訳もちろんついてそのときついていなくて、全て英語で話していたので、完全には理解できていなくて何となくこういう内容だろうなっていうのは、おそらくは理解はできていましたけど何となく違和感は感じてました。

そのとき彼は、僕に対して、ホテルに帰った後で2人でより詳しいことを話したいので、今は待ってくれというふうに言っていたので僕は、まずそのときはホテルまで待つことにしました。

僕は一平さんがそのときにギャンブル依存症だっていうのは僕はもちろん知らなかったですし、彼が借金をしていることも、そのミーティングの時はもちろん知りませんでした。 僕は彼の借金返済にももちろん同意してませんし、ブックメーカーに対して彼に送金をしてくれって頼んだことはもちろん、許可したことはもちろんないです。

その試合後、ホテルに戻ってちゃんと初めてそこで話をして、彼に巨額の借金があることを知りました。

彼はそのとき私に僕の口座に勝手にアクセスして、ブックメーカーに送金していたということを僕に伝えました。

僕はやっぱりおかしい、これおかしいなと思って代理人と話したいということで代理人たちを呼んで、そこで話し合いました。

話終わってこれを聞いて僕の代理人もやっぱり彼に嘘をつかれていたということを、初めて知ってすぐにドジャースの皆さんと、弁護士の人たちに、そのときに連絡しました。

ドジャースの皆さんも代理人たちも彼らもそのときに初めて、また自分たちも嘘をつかれていたということを、そのときに知りました。

そして弁護士の人たちは、これは窃盗と詐欺なのでこれを警察の当局に引き渡すという報告をそのときにしました。

これが、そこまでの流れなので、僕はもちろんスポーツ賭博には関与していないですしブックメーカーに、さっきも言ったけど送金をしていたという事実は全くありません。

正直ショックという言葉が正しいとは思わないですし、それ以上上手く言葉では表せないような、感覚でこの1週間ぐらいは、ずっと過ごしてきたので、今はそれを言葉にするのは難しいなと思ってます。ただ、もうシーズンも本格的にスタートするので、ここからは弁護士の方々にもお任せしますし、僕自身も警察当局に全面的に協力したいなと思ってます。

なので気持ちを切り替えは難しいですけどもシーズンに向けてまたスタートしたいですし、今日まずお話できてよかったなとも思っているので。今日は質疑応答は、これが今お話できる全てなので、質疑応答はしませんが、これからさらに進んでいくと思います。ありがとうございました。