2024年3月24日 5時00分
王の服は何色か
かつて琉球王国を彩った文化財は、近代以降(いこう)、悲運に見舞われた。王族である商家(しょうけ)が持っていた歴史書などは明治政府に押収された(おうしゅうされた)後、関東大震災で燃えてしまった。沖縄で難を逃れていた美術品なども、地上戦で灰となってしまった▼戦後、それらを復元するのに貴重な手がかりとなったのが、研究者の鎌倉芳太郎(かまくら よしたろう)が残した膨大(ぼうだい)な資料である。戦前に沖縄を訪れ、首里城や工芸品、歴代国王の肖像画である「御後絵(おごえ)」などを写真に収めていた▼惜しむらくは、写真はモノクロだった。描かれた王は、何色の服をまとっているのか。冠の宝石(ほうせき)は深い海の色か、輝く太陽の色か。沖縄の美(ちゅ)ら島財団は、同時代の絵画(かいが)の顔料分析などから色を推定し、最新技術をつかって絵を復元してきた▼まさか、答えあわせが出来るとは。関係者の誰も夢想していなかっただろう。第18代尚育(しょういく)王の「御後絵(おごえ)」などが先日、米国で見つかった。沖縄戦の戦利品だったのか。退役軍人の家の屋根裏部屋にあったという▼王がまとっていたのは、じつに鮮やかな紅の地に金の刺繍(ししゅう)の服だった。「鳥肌(とりはだ)がたつ思いでした。色が復元とほぼ合っているのにもホッとしました」と財団の幸喜淳(こうき あつし)・琉球文化財研究室長は語った。沖縄に戻るまでに、79年の歳月を要した▼土地の人々が大切に守り続けてきたものが、戦争でうばわれる。アフガニスタンの仏像、シリアの古代都市遺跡……。ウクライナやガザも同様だろう。人間は愚行(ぐこう)を止める手立てを、いまなお知らない。
おしむらくは をしむらく― 2【惜しむらくは】 (連語)〔「らく」は接尾語。ク語法の類推によってできた〕 惜しいことには。残念なことには。「勇気はあるが,―才知(さいち)に欠ける」
答え合わせ(こたえあわせ) 別表記:答えあわせ、答え合せ 答えが正しいかどうか確認すること、または合っているかどうか模範解答と比較することなどを意味する表現。