2024年7月20日 5時00分

「子供の科学」創刊100年

 本当の科学というものが、どういうものであるかを、皆さんに知っていただく――。そう掲げて大正時代に生まれた月刊誌「子供の科学」が創刊100周年を迎えた。100年後の未来はどうなっているか、という初期の特集がおもしろい▼海中都市に多くの人が住んでいる。その街には電車も車も走っておらず、みな「動く歩道」で移動する。石炭を燃やす発電所は地上からなくなっていて、電気は空中から無限にとれる。そして無人飛行機と毒ガスによる戦争の時代になっている、という▼思い当たる予測もあれば、外れた予測もある。外れて良かったものもある。さて空を見あげて考える。いまから100年後の世界はどうなっているだろう。ふいに、子どものころの想像力が恋しくなる▼NHKラジオの「子ども科学電話相談」で先日、こんな質問があった。「星の光のパワーを集めてタイムマシンを作りたいけど出来る?」。別の日には「カラスは黒いけど夏は暑くないの?」。なんと自由で、愉快な発想だろう▼ラジオの回答者の一人、国立天文台の本間希樹(ほんま まれき)教授が言っていた。「『出来ない』という大人の常識を子どもは突いてくる。それは時に本質的で、学ぶことも大いにあります」▼きょうから夏休みという学校は多い。雲のわき起こるのをずっと見ていたり、アリの行列をたどっていったり。小さな王国があちこちに生まれるだろう。心にまかれた種はいつか芽を出す。100年後を支える大樹(たいじゅ)に育つかもしれない。