2024年1月16日 5時00分

AI時代の百人一首

 〈AIにレポート書かせAIにバレてしまったAI社会〉高専3宮下夏澄(みやした かすみ)。ついにここまで来たか。毎年この時期に東洋大学から「現代学生百人一首」が届く。37回目の今回、募集要項(ぼしゅうようこう)に初めて生成AIを使用しないとの条件が明記された。集まったのは6万3606首。Z世代の感性に触れる▼〈AIが出した答えと違うけどこの瞬間は君を信じる〉高1今村柚希(いまむら ゆずき)。一応、聞いてはみる。〈Siriに聞く学校行くのなんでかと友達たくさんいるところです〉中1深沢悠翔(ふかさわ はると)。「Hey Siri」と尋ねてみたら▼〈バスの中ほんの少しの優越感周りは携帯私は読書〉中3乾育瞳(きみやす はぐみ)。どの乗客もスマホ画面に見入る(みいる)なかで、私の手には本がある。〈体育はみんな好きだと言われてる嫌いな人は皆じゃないのか〉高3山崎雄大(やまざき ゆうだい)。「みんな」の呪文に縛られたくない▼〈不自由な私の半分補って(おぎなって)助けてくれる皆の優しさ〉高3石田華蓮(いしだ かれん)。障害を持つ友を支える「みんな」もいる。〈生活を壊したコロナ後遺症ただの進級切実(せつじつ)に願う〉高2鎌倉朱里(かまくら あかり)。一緒に卒業したい▼コロナ禍の影響はいまも。〈甲子園やっと掴んだ(つかんだ)この切符心が枯れた(かれた)コロナウイルス〉高3則定優作(のりさだ ゆうさく)。感染し、あこがれ続けた場所に立てなかったという。汗と涙が力になると信じたい▼どの作品も時代を映す鏡なのだと改めて実感する。〈一本のXかYそれだけで狭まる(せばまる)私狭まる未来〉高1葛城澪(かつらぎ れい)。性差別のない、多様性のある社会へ。狭めては(せばめては)いけないと、思いを新たに。