2024年1月15日 5時00分
次期副総統は「猫戦士」
今回の台湾総統選に勝った民進党は16年前、大敗(たいはい)を喫している。当時政界を離れていた蔡英文(ツァイインウェン)氏は投開票日(とうかいひょうび)の夜、選挙本部へ様子を見に行った。敗北宣言をする総統候補より、その右後ろで大きな目からポロポロと涙を流す女性に目を奪われたという▼泣いていたのは蕭美琴(シアオメイチン)氏だ。『蔡英文自伝』に、友人として何度も登場する。共に猫好き(ねこずき)で、野党時代は蕭氏の出張中に蔡氏が愛猫(あいねこ)の世話をしたそうだ。民進党が弱い選挙区で候補者(こうほしゃ)が見つからず、蔡氏の頼みで出ると決めた蕭氏が猫と一緒に引っ越した際のいきさつも書かれている▼その蕭氏が、副総統に就任する。神戸生まれで、台湾人宣教師の父親と米国人の母親を持つ。昨年11月まで3年余り、駐米代表を務めた。今回の総統選で頼清徳(ライチントー)氏とペアを組むため、ワシントンから慌ただしく4匹の猫と戻った▼先月、英誌の取材で語った言葉が興味深い。「オオカミの戦士」と対峙(たいじ)するため、米国への赴任前から自分のことを「猫の戦士」と呼ぶようになったという。威圧的な中国の「戦狼外交((せんろうがいこう)」を皮肉ったものだ▼機敏かつ柔軟で、バランス感覚に優れた猫のようにふるまう。それは、台湾が置かれた微妙な立場から中国や米国との関係を考えて達した戦略なのだろう。「猫に命令はできない。優しくされれば温かさで応える」とも▼結党以来最大の危機にあった民進党は、蔡氏のもとで復活した。涙を拭いて、立ち上がった人材もいる。台湾政治のたくましさを見た思いがする。
戦狼外交(せんろうがいこう、中国語: 戰狼外交、英語: Wolf warrior diplomacy)とは、21世紀以降の中華人民共和国の外交官が採用したとされる攻撃的な外交スタイルのことである。 この用語は、中国のランボー風のアクション映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』からの造語(ぞうご)である。
年月 | 略史 |
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1949年12月7日 | 台北に「臨時首都」を遷都 |
1971年10月25日 | 国連を脱退 |
1975年4月5日 | 蒋介石総統死去 |
1987年7月15日 | 戒厳令解除 |
1988年1月13日 | 蒋経国総統死去、李登輝副総統が総統に就任 |
1996年3月23日 | 初の総統直接選挙で李登輝が当選 |
2000年3月18日 | 民進党の陳水扁が総統に当選 |
2004年3月20日 | 陳水扁が総統に再選 |
2008年3月22日 | 国民党の馬英九が総統に当選 |
2012年1月14日 | 馬英九が総統に再選 |
2016年1月16日 | 民進党の蔡英文が総統に当選 |
2020年1月11日 | 蔡英文が総統に再選 |
2024年1月14日 | 頼清徳氏が総統に当選 |
3月22日に実施される総統選挙の立候補受付が1月26日からはじまり、与野党の各候補者が翌27日までに届け出を済ませた。与党・民主進歩党(民進党)の謝長廷・総統候補および蘇貞昌・副総統候補は1月27日午前、中央選挙委員会に赴き、総統選挙立候補を届け出た。