2023年4月29日

ラッコが見られなくなる日

あの年、珍獣(ちんじゅう)ブームの立役者(たてやくしゃ)[1] は3人、いや3種類いた。すたこら [2] 走るエリマキトカゲ [3] がCMに登場したのは1984年春。秋には、オーストラリアからコアラ [4] が初来日した。ぬいぐるみが飛ぶように売れた▼残る一つがラッコ  [5] である。首都圏で初めて東京・池袋の水族館にやってきた。ぷかぷか、くるり。水に浮かんで器用に貝をわる姿は、じつに愛らしかった。ピーク時には全国に122頭いた▼それが、いまは三重(みえ)と福岡にわずか3頭しかいないと、先日の本紙にあって驚いた。いずれも高齢にさしかかり、繁殖(はんしょく)は難しいのだとか。いつの間にそんな――と嘆いていたら、ことは、それにとどまらないらしい▼ホッキョクグマ  [6] やゴリラ [7] も飼育数(しいくすう)が減っている。アフリカゾウ [8] にいたっては、昨年までの20年間で61頭から23頭になった。さらに20年後にはゼロになるという予測もある。足を運べばいつでも世界の人気者に会える時代は、とうに過ぎたのかもしれない▼数を増やそうにも、野生生物を守るために、海外からの輸入は厳しい。連れてくるにも、動物にストレスを与えないように、生息地に似た環境が必要になる。「動物福祉」という考えが最近の潮流だ▼きょうからの大型連休で動物に会いに行く人も多かろう。一足先(いっそくさき)に訪れた関東近郊のある動物園では、大きな体でのし歩くアフリカゾウに子供たちが歓声をあげていた。そんな光景がなくなるのはさみしい。同時に、動物たちにも幸せであってほしい。欲張り(よくばり)だろうか。


[1] たてやくしゃ 3【立役者】

① 芝居で一座の中心になる役者。立役(たてやく)。立者(たてもの)。

② ある方面で中心となって活躍する者。中心人物。「優勝への―」

[2] すたこら 2(副)

急いで歩くさま。特に,急いでその場を離れるさま。「―(と)歩く」「―さっさと逃げる」

[3] エリマキトカゲ(Chlamydosaurus kingii)は、爬虫綱有鱗目アガマ科エリマキトカゲ属に分類されるトカゲ。本種のみでエリマキトカゲ属を構成する。

エリマキトカゲ.png

[4] コアラ(Koala[5]、学名:Phascolarctos cinereus)は、哺乳綱(ほにゅうこう)双前歯目(そうぜんしもく)コアラ科コアラ属に分類される有袋類(ゆうたいるい)。現生種(げんせいしゅ)では本種のみでコアラ科コアラ属を構成する コアラ.png

[5] ラッコ(海獺、Sea otter, Enhydra lutris)は、食肉目(しょくにくめ)イタチ科ラッコ属に分類される哺乳類で、海獣の一種。現生種では本種のみでラッコ属を構成する ラッコ.png ラッコ-01.png

[6] ホッキョクグマ(北極熊、Ursus maritimus)は、哺乳綱食肉目クマ科クマ属に分類される食肉類。 ホッキョクグマ.png

体長オス:200 - 250 cm メス:180 - 200 cm 体重オス:340 - 658 kgメス:150 - 250 kg。オスの平均体重は385~410kg。ボーフォート海出身のオスは平均450kgになる。メスは妊娠時500kgに達する場合もある。地球温暖化の影響で小型化が進んでおり、1984年から2009年までの25年間で、オスの平均体重が45kg、メスの平均体重が31kg減少した。ホッキョクグマはクマ科最大の種の一つだがヒグマの中でもコディアックヒグマはホッキョクグマと同等のサイズを持つ。

[7] ゴリラは、霊長目ヒト科ゴリラ属(ゴリラぞく、Gorilla)に分類される構成種の総称。

ゴリラ.png

[8] アフリカゾウ(阿弗利加象、Loxodonta africana)は、長鼻目(ちょうびもく)ゾウ科アフリカゾウ属に分類されるゾウ。

アフリカゾウ.png