2023年10月23日 5時00分

スポーツ観戦の醍醐味(だいごみ)

 南太平洋の島々を旅していると、ラグビーをする子どもたちをよく見かける。あちこちの原っぱ(はらっぱ)に立つポールからもラグビーの人気ぶりがわかる。環境問題を取材したトンガでは、役人に「今から息子が試合に出るから」と請われて(こわれて)一緒に小学校へ。応援の合間に話を聞いた▼フィジーでは総選挙の日、投票所のそばで練習する中学生たちに遭遇(そうぐ)した。颯爽(さっそう)とした走りとパス回しに感心していると、指導者が話しかけてきた。「とにかく、前へ進めと教えている。難しいことは後で覚えればいい」と笑った▼さて、ラグビーW杯は決勝を待つだけとなった。今大会で特に新鮮に感じたのはフィジー代表だった。スクラムでじりじりと押すのではなく、自由奔放(じゆうほんぽう)に前へ前へと疾走(しっそう)する姿に、島の子どもたちを思い出した▼スピードを感じたのは、プレースタイルだけではない。「ショットクロック」が導入され、ゴールキックの制限時間が厳格になった。試合の迅速化が目的で、トライ後は90秒以内、ペナルティーゴールは60秒以内に蹴る決まりだ▼残り時間を意識してか、時に急いで蹴るような様子が気になった。従来通りにじっくり構えて無効になった選手も。ラグビーも時短(じたん)か。試合時間は決まっているのに、そんなに急がなくてもと思ってしまう▼今季から投球間(とうきゅうかん)の時間制限を設けた(もうけた)大リーグは、試合時間が昨季(さくき)より24分短縮された。スポーツも効率よく進んで早く終わるほど良いのか。じっくり見たいと思うのは時代遅れなのか。