2023年10月11日 5時00分

インティファーダから36年

 イスラエル占領下のガザとヨルダン川西岸(よるだんがわせいがん)で1987年末、パレスチナ人の若者たちがイスラエル軍へ向かって石を投げ始めた。少年はよく飛ぶ平べったい(ひらべった・い 、flat)小石(こいし)を、青年は大きな石を。女性や子どもも加わり、世界で報じられるようになった。インティファーダ(民衆蜂起、みんしゅうほうき)である▼圧倒的な強者に対する抵抗運動として、国際社会の同情を集めた。これを機に創設されたのが、現在ガザ地区を実効支配するイスラム組織(そしき)のハマスだ。イスラエルの存在を認めた「オスロ合意」を拒絶した▼後の第2次インティファーダでハマスは銃を使い始め、自爆テロも多用するようになった。戦車や戦闘機を繰り出すイスラエルとの衝突が激化する一方、社会福祉活動などを通じて住民への影響力を強めた▼ガザで20年前、ハマスに協力する女性に話を聞いた。息子3人を自爆攻撃などに送り出しており、イスラエル軍に居場所がばれないようにと、取材の指定場所が何度も変わった。武装メンバーが警備するなか、「後悔はない。残りの息子も捧げる(ささげる)」と語る姿に衝撃を受けた▼今回、イスラエルに仕掛けた大規模攻撃で、ハマスは何千発ものロケット弾を発射した。多数の民間人が犠牲になっており、決して許されることではない。36年を経て、「弱者の抵抗運動」は変わった▼変わらないのは、中東で進まない和平と果てしない(際限のない)暴力だ。イスラエルの報復も続く。封鎖されて逃げ場がないガザで、また多くの市民が犠牲になる。遣り切れない(やりきれない、⇨堪らない【たまらない】)。