2023年12月31日 5時00分
さよなら2023年
ニュースに追われ、あっという間に年の瀬を迎えた。あれをよんでおきたかった、これを見すごした、と心残りは数多い。まったく、ふり返れば後悔ばかり先に立つ▼ではどんな思いをあすの元日へと持ち越そうか(持ちこそう)か。除夜の鐘(じょやのかね)で心を清め(きよめ)、感謝と夢とを新たにする。年越しくらい、そうありたいものだ。嘆きを過去に流す▼夢といえば、子どもによる発言を募った(つのった)本紙投稿欄「あのね」に昔、こんな話が出た。2歳の息子は、枕カバー(まくらカバー)を外して洗おうとすると、さわらせない。「あけたらダメ」。枕のなかに夢が入ってるんだと言う。「まだみてないのがたくさんあるの」と▼大人が出来ることと言えば、一つでも多くそんな夢を叶(かな)えてやることだ。だが、遍く(普く・あまねく)世界に目を転ずれば、情け容赦のない砲弾で涙を流す子がいる。虐待で、きらめく感性の芽を摘み取られる子がいる▼ガザ地区で、ウクライナで、海の彼方(かなた)で、日本で。新しいカレンダーのまぶしい余白が笑顔で埋まっていく。あるがままの子どもが、お日様の匂いの枕で眠りにつく。そうした日々を、願ってやまない▼教師だった故鹿島和夫(かしま かずお)さんの編書に小1の教え子らの詩集がある。年末のわくわくした感じを伝えてくれるのは、瀬戸夏樹(せと なつき)ちゃんの作品だ。「きょうはおおみそかです/おばあちゃんが千円札に/アイロンをかけています」。そおっと見たのかな。明日が「たのしみ」。こんな日常に幸せは潜む。ではみなさま、よいお年を。ここらで筆をおく。