2023年12月30日 5時00分
かけこみの年賀状
生まれるものあれば、消えるものあり。見坊行徳(けんぼうゆきのり)ら編著『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』には、その名のとおり、一度は辞典に掲載されたが、改訂によって削られた項目が収められている。なんと「携帯メール」もその一つだ。時の流れはおそろしい▼「着メロ」「赤外線通信」などと共に、2022年の最新版で消えた。スマホの普及で、日常的には使われなくなったと判断されたようだ▼ネット上の通信手段は、かくも盛んに新旧交代をくり返し、進化をとげる。その裏返しだろう。19年の全国学力調査で中学3年に封筒(ふうとう)の宛名書き(あてながき)をさせると、正答は57%にとどまった。相手の名前を右端に書いてしまったり、住所の位置にメールアドレスを併記したり。機会がないに違いない▼相手の顔を浮かべながら、年賀状を一枚一枚認める(したためる)。そんな光景も、いずれは「いまどき珍しい」と言われるのだろうか。今年の年賀葉書(ねんがはがき)の発行は約14億枚。ピーク時の3分の1だという。郵便物全体の数も半減し(はんげんし)、これでは値上げに踏み切るのもやむをえまい▼じつは私も、だいぶ前に年賀状をやめてしまった。出すなら印刷で済ませず、干支(えと)の一つぐらい描きたい。でも商売柄(しょうばいがら)、年末年始も締め切りに追われる。それを言い訳に遠退いた(とおのいた)▼なのに、まったく勝手なものだ。世の中で年賀状じまいが広まっていると聞けば、なんだかさびしくなる。思えば、旧友たちはどうしているだろう。いまから書き始めて、まだ間に合うだろうか。
- 封筒の宛名書き