2023年12月12日 5時00分
安倍派依存の行く末は
イタリアの政治思想家マキャベリは、戦争や疫病など激動の時代に注目される。主著『君主論』は地元の統治者に自身を売り込む「就活論文」だったが、後世でも時々の危機状況に合わせて読まれてきた。政治資金パーティーで自民党が大揺れ(おおゆれ)のなか、改めてひもといた▼「自分より強い有力者と組んで攻撃してはいけない」「誰を側近に選ぶかは少なからず重要だ」。この件(くだり)に岸田首相の顔が浮かんだ。党内基盤が強固(きょうこ)でないとはいえ、最大派閥(はばつ)・安倍派への依存で政権の安定を図ってきた。その選択は正しかったのか▼首相は、今春の安倍派パーティーで松野官房長官や萩生田(はぎうだ)政調会長らの名前を挙げ、「岸田政権の屋台骨(やたいこつ)」と持ち上げた。同派所属の政務三役は15人にのぼり、骨組み(ほねぐみ)は崩壊しつつある▼これも派閥のおごりのなせる業(わざ)か。「頭悪いね。これ以上、言いませんと言っているじゃない」。衆院議員の谷川弥一(たにがわ やいち)氏が一昨日、報道陣へ放った言葉だ。自身の4千万円超の疑惑を問われ、紙を読み上げた。重ねて質問されると開き直った▼疑惑では安倍派以外の名前もあがっており、党全体の問題だ。「適切なタイミングで適切に対応を」と述べた首相は、わかっているのか。パーティー券も派閥も億単位の裏金も、一般庶民(しょみん)の感覚からはかけ離れていることを▼マキャベリは、賢者(けんじゃ)を選び助言を受けよと説いた。だが、最後に決めるのは指導者自身である。「自分だけで、自分なりの方法で、決断を下さねばならない」