2023年11月7日 5時00分
38年ぶりの阪神日本一
バース、掛布(かけぬの)、岡田の活躍を授業中に知りたい。中学の同級生たちは一計(いっけい)を案じた。教師にばれないように、胸のラジオからイヤホンを延ばして制服の袖を通し、頬杖(ほおづえ)を装って中継を聞く。時々ピクリと体が動くのがわかった▼1985年の思い出だ。今と違って、日本シリーズは昼だった。レールを走るのはまだ国鉄で、「8時だョ!全員集合」が終わり、電電公社から変わった「NTT」が新語に選ばれた年だった。書きながら隔世(かくせい)の感に打たれている。若い読者はなおさらだろう▼じつに辛抱強く、ファンは待ち続けた。夢の再来を信じては裏切られ、でも手を切れず。昭和から令和へと元号をひとつ飛び越えて、38年ぶりに阪神(はんしん)タイガースが日本一に輝いた。「長かったですね」。岡田彰布(おかだ あきのぶ)監督の一言には万感の思いがこもっていた▼名選手必ずしも名監督ならず、と言われるのは、人間同士(にんげんどうし)ても、過去の成功に引きずられるからだろう。しかし岡田監督は著書『そら、そうよ』で書いている。目指すのは自分がやりたい野球ではなく、チームにあわせた野球だ、と▼現役当時もロッカー室で指していたほどの将棋好きだという。何手も先を読む。鋭い眼力(がんりょく)に、年季の入った円熟みが加わった。采配に応えた選手たちが栄光をひきよせた▼記念セールがきのう始まった。前回はまだ消費税のない時代だった。しかし10%に……いや、野暮な(やぼな)ことは言うまい。財布からお金が飛んでいく。ファンにはうれしい悲鳴でしかない。
やぼ 【野暮】野暮な 形容詞 【単純で事情にうとい】unsophisticated ; 【平凡でつまらない】⦅話⦆ corny ; 【人の気持ちに鈍感な】insensitive ; 【作法のあかぬけしない】unrefined.
▸ 私はそんなことを言うほどやぼじゃない I wouldn't be so inelegant [thoughtless] as to say such a thing.
▸ 君は彼女の申し出を断るなんてやぼな⦅ばかな⦆奴だな It was stupid of you to refuse her offer.
野暮用 【private】business 【雑用】a small job.
▸ ちょっとやぼ用があってね There was some stuff I had to do. (!something のくだけた言い方)