2023年6月25日 5時00分

マイナカードと保険証

 最新のゲーム機にするか、動物図鑑にするか。誕生日のプレゼントを子どもが迷う。こんな時、頭ごなしに親が図鑑と決めてもだめなことが多い。「こっちの方が長く楽しめるよ」などと、財布と相談しながら、うまく結論を導く。大人はずるいのだ▼本人が決めたように思わせながら、じつはそう仕向けている。これが親子の小さな駆け引きならニヤリとするが、政治絡み(せいじがらみ)となれば笑っていられない。健康保険証が廃止されてマイナカードと一体となる件である▼マイナンバー法は先の国会であれこれ改正されたが、カードの取得(しゅうとく)はあいかわらず任意とされている。実態はどうだろう。もし保険証のかわりに資格確認書をもらっても、1年ごとの更新が必要になる。不便(ふべん)を押しつけてカードに切り替えさせたい思惑が見え見えだ▼先ごろ閣議決定された「デジタル社会重点計画」では、母子健康手帳(ぼし、ははこけんこうてちょう)と一体化させる方針も示された。ハローワークでの求職の受け付け(うけつけ)でも、カードが必要になる。図書館カードや国立大の授業の出欠管理(しゅっけつかんり)にも広がる▼外堀(そとぼり)をどんどん埋めておいて、でもカードの取得(しゅうとく)は自分で選んだことでしょうと、政府は涼しい顔をする。だとしたら、じつにずるい。強引な手法(しゅほう)は愛想をつかされるだろう▼こんな至言(しげん)を見つけた。利用者を差しおいて、行政手続きのオンライン化そのものが「自己目的とならないように」とある。ほかならぬ重点計画の文書だ。もう一度、河野太郎デジタル相は熟読したほうがいい。