2023年6月21日 5時00分

夏至とアジサイ

 お隣の国、韓国では、紫陽花(あじさい、しようか)をスグクと呼ぶそうだ。漢字をはめれば「水菊」だと聞いて、うなずく。梅雨(ばいう、つゆ)のこの時期、たっぷりと雨水を含み、重たげ(おもたげ)に咲く姿が、何ともお似合いの花である。ハイドランジアとの属名も、水と容器の意味だとか▼そんな雨の花も、近年の線状降水帯とやらの集中豪雨にはさぞ、うんざりしているのではなかろうか。突然の強雨(きょうう)に激しく叩かれ(たたから)、淡い青を震わせているのを見ると、無性(むしょう、,抑えきれないさま)に気の毒に、かわいそうに思ってしまう。やはり紫陽花には、しとしと雨がいい▼ここ数日は、梅雨の合間に姿を見せた太陽に少し、ほっとしているのかもしれない。いやいや、はや6月でこの日差しの強さかと、日に焼けて、ぐったりしているだろうか▼もう一つの隣国、中国では綉球花(シウチウホワ)と書く。毬(まり)のようにまるく咲く花だとの意である。「紫陽花」という漢名は元々、唐代(とうだい)の白居易((はく きょい)の詩に由来するそうだが、別の花の話が誤って、日本に伝わってしまったらしい▼一方、「アジサイ」という呼び名は、日本で生まれた。ものの本によれば、藍色の集まる様を、古人(こじん)はこう表現したという。花の色が次々と変わることから、七変化(ななへんげ、しちへんげ)やバケバナとも言われてきた▼きょうはもう、夏至(げし)だという。道理で(どうりで)朝が早いわけだ。逆に言えば、これから徐々に夜が長くなる。半影(はんえい)を好む紫陽花にも、少しは休み時間が増えるだろうか。〈暮れゆけば明るきうしほ濃紫陽花〉鷲谷七菜子(わしたに ななこ)。地球の軸の傾きを想像しつつ、二度寝(にどね)する。

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