2023年6月18日 5時00分
ベルルスコーニ氏の時代
1986年7月。イタリア・ミラノの競技場の芝生(しばふ)に突然、ヘリが着陸した。『ワルキューレの騎行』が流れ、ダークスーツの男性が姿を現す。当時49歳の実業家、シルビオ・ベルルスコーニ氏である。サッカーチームのACミランを買収し、派手な登場でファンの度肝(どぎも)を抜いた▼八百長(やおや)疑惑で危機的状況だったACミランに巨額を投じ、有力選手を集めて名門チームに育てた。不動産業で成功し、民放テレビ各局を買収してメディア王となり、さらにスター選手に囲まれる。イタリア人の夢を体現したと言われた▼次に転じたのは政界である。大疑獄(だいぎごく)事件で古い政党の枠組み(わくぐみ)が崩れた90年代に、サッカー思考を持ち込んだ。行き場を失った中道右派の支持層を「中盤があいた」と表現し、「フィールドに出る」と出馬を宣言。応援で叫ぶ「がんばれイタリア」という名の新党を立ち上げ、総選挙で大勝した▼そのベルルスコーニ氏が亡くなった。醜聞続き(しゅうぶんつづき)で退任と返り咲きを繰り返したが、計9年余(きゅうねんあまり)の首相在任期間は戦後最長(さいちょう)である。大富豪(だいふごう)で反共(はんきょう)、反エリートを主張する姿はトランプ前米大統領を彷彿(ほうふつ)とさせる▼政治家としての功績は、政権交代の機運をつくったことではないか。中道左派は危機感を強め内紛や分裂をやめた。打倒ベルルスコーニで団結したのは皮肉な結果だ▼国葬の日、ミラノ大聖堂前はACミランのファンで埋まった。そのチームはいま外資の手中(しゅちゅう)にある。ポピュリストが去り、一つの時代が終わったと感じる。
シルヴィオ・ベルルスコーニ(イタリア語: Silvio Berlusconi、イタリア語発音: [ˈsilvjo berluˈskoːni] ( 音声ファイル)、1936年9月29日 - 2023年6月12日)は、イタリアの政治家、実業家。
建設業およびメディア経営で成功を収めた実業家で約78億ドル(世界第118位)の総資産を持つ世界有数の資産家として知られる。また企業経営から政治家に転身してタンジェントポリ後の政界再編で頭角を現し、閣僚評議会議長を4期(第50・56・57・59代)務めている。労働騎士勲章(英語版)を1977年に授与されており、支持者からはイル・カヴァリエーレ(Il Cavaliere)と呼ばれる。
スポーツ界においてサッカーに情熱を注ぎ、母国の名門クラブ・ACミランのオーナー兼会長を長きにわたり務めた。就任当初に低迷していたチームを立て直し、1990年代に黄金期を迎え世界屈指の強豪クラブに昇華させている。
- 性的スキャンダル
性的スキャンダルや性的発言、性差別発言が多いことでも知られ、度々マスコミなどで物議(ぶつぎ)を醸した(かもした)だけでなく、自身の離婚や政治的危機の引き金にもなっている。
- ノエミ・レティツィア
2009年5月に、18歳の下着モデルのノエミ・レティツィア(Noemi Letizia)との親密な関係が発覚した、更には2009年7月頃、「ブンガブンガ・パーティー」と呼ばれる乱交パーティーにおいて42歳のパトリツィア・ダダリオ(Patrizia D'Addario)を相手に買春した疑惑が浮上した結果、妻のヴェロニカ・ラリオから三行半(みくだり 離縁状)を突きつけられ、毎月350万ユーロ(日本円で約4億6000万円)の生活費を請求されていることが報じられたとしてイタリアのみならず世界各国で報道が過熱した。
- パトリツィア・ダダリオ
一方で、就任直前だったオバマ米元大統領を「日焼けしている」と表現するなど国際舞台での失言癖も批判を浴びた。汚職や未成年売春といった数々の疑惑も付きまとい、13年には所有企業に絡む脱税事件で有罪判決が確定。いったん政界を離れたが、公民権復活後の19年に欧州議員となり、昨年の総選挙で上院議員に当選。ロシアのウクライナ侵攻後は、プーチン大統領との親しい関係性も批判の対象となった。 近年は新型コロナウイルス感染による重症化や心臓疾患などで入退院を繰り返していた。伊メディアによると、今月9日に検査入院した後、12日に体調が急変した。
- ベルルスコーニ氏を追悼大聖堂で国葬
「ブンガブンガ・パーティー」という用語は、2011年にイタリアで報道された事件に関連して広まりました。報道によると、シルヴィオ・ベルルスコーニが自身の所有する別荘で開かれたパーティーにおいて、未成年の女性を含む複数の女性が関与していたとされています。この事件はイタリアで大きな論争を引き起こし、法的な問題となりました。
イタリアの首相(イタリアのしゅしょう)は、イタリアの行政府の長。正式名称は閣僚評議会議長(かくりょうひょうぎかいぎちょう、イタリア語: Presidente del Consiglio dei Ministri)。