2023年6月16日 5時00分
骨太(ほねぶと)の方針
国のかじ取り(かじとり)への、じつに真っ当(まっとう)な批判である。「借金つまり国債発行は、総選挙の時に投票権がなかった将来の有権者が納めた税金を、現在の有権者の歓心を買う資金に充てたということです」▼どこかの新聞の社説ではない。野党時代の自民党が2010年にまとめた文書から引いた。財政再建をうたう党綱領(とうこうりょう)と一体になった解説だ。旧民主党政権の看板だった子ども手当を「ばらまき」と詰り(なじり)、予算の無駄を削れば財源は出てくるという発想の安易さも戒めて(いましめて)いる▼政治は生き物だ。世界の動きや人々の関心によって、掲げた(かかげた)政策を変えることはあるだろう。ただ綱領は党の基本方針だ。「野党時代だけのものではありません」とも記している。比べるうちに、ここで批判した手法が、いまの岸田政権のやり方に映ってくる▼「骨太の方針」が、きょうにも閣議決定される。少子化対策は、児童手当の所得制限をなくして大盤振舞い(だいばんぶるまい)となる。防衛費(ぼうえいひ)も、以前ならありえないほど増やされる。なのにどちらも財源はぼんやりしていて、いまの無駄をさがす歳出改革(さいしゅつかいかく)だのみの部分がある▼負担は先送りだ。防衛増税を始める時期は「2025年以降の然るべき(しかるべき)時期とすることも可能」。もってまわった(talk in a roundabout way)悪文(あくぶん)の見本のような決着(けっちゃく)になりそうだ。少子化対策では、つなぎ国債に頼る▼綱領はいわば政党の憲法です――先の解説のことばだ。誰かに押しつけられたわけでもなく、自主的に定めた“憲法”であろう。放り投げてどうする。