2023年8月18日 5時00分

岸田首相が買った本

 夏休みの前には、気になっていた本を買いだめしたくなる。自宅でじっくりと。あるいは旅の友に。買った後を想像しながら選ぶのは、じつに楽しい。岸田文雄首相もそんな気分だったか。東京の書店で10冊ほど買ったという記事が先日あった。購入した一部が記されていた▼たとえば『地図でスッと頭に入る世界の資源と争奪戦』や『まるわかりChatGPT&生成AI』だ。わかりやすさを売りにした入門書だが、やぼは言うまい(少说废话)。首相といえども、すべての分野に精通できるわけではなかろう▼気にかかったのは『アマテラスの暗号』という1冊である。買い求めて(買って手に入れる)、中身に目を丸くさせられた。伊勢神宮(いせじんぐう)にまつられているのはアマテラスであり、同時にキリストである。古代日本の礎を築いた主役は、渡来したユダヤ人である。そんな説が、ミステリーの形を借りながら「歴史」として語られている▼著者の伊勢谷武氏(いせや たけし)のあとがきがある。「学校やメディアは、古代史や近現代史の多くについて意図的に事実を曲げ真実を隠している」そうだ▼むろん、どんな本を読もうと自由だ。店頭で、たまたま目にとまっただけなのかもしれない。だが短い休みの相棒(あいぼう)として、一国の総理は、はたしてどこに興味を引かれたのか。少々不安になる▼きのう首相は羽田(はねだ)空港を発って(たった)、米国へと向かった。日米韓の首脳会談で得点をかせぎ、政権の浮揚へつなげたいに違いない。往復には約27時間かかる。機内ではさて、何を読むのだろうか。