2023年5月28日 5時00分
動物の言葉がわかるには
スキスキスキスキ――。早朝に自宅の窓を開けたら、鳥の鳴き声(なきごえ)が聞こえてきた。はっきりした「発音」に驚きつつ双眼鏡を手に見渡すと、いた。集合住宅の屋上で、胸にネクタイのような黒い線があるシジュウカラが鳴いていた▼この鳥を追って18年になる鈴木俊貴さん(39)は、1年の半分以上を森林で過ごす。ピーツピやジャージャーなど多様な鳴き声を観察・分析。「シジュウカラは言葉を話す」と証明した論文は、国際的な注目を集めた▼鈴木さんを訪ね、動画を見ながら「通訳」してもらった。巣の外(すのそと)で鳴く親鳥は、ヒナに巣立ち(すだち)を促しているそうだ。急に鳴き声が変わったのは、敵が来るとの注意喚起だという。直後、巣の下を猫が通った▼この春、東大先端科学技術研究センターに世界でも珍しい「動物言語学」の研究室を開き、鳥以外の動物へも対象を広げた。「人間だけが言葉を持ち、動物は感情で鳴く」という考え方を覆したい(くつがえしたい)という。動物の言葉を理解するには、人間の価値観から離れるべきだとも▼動物語というとドリトル先生が頭に浮かぶ。彼は200年前に賢いオウムから鳥語(とりご)を学んだ。それを端緒(たんしょ)に犬語(いぬご)や馬語(うまご)などを習得したが、最初に教えを請うたのは「鳥のイロハ」だった。どうやら先生も、人間を中心に考えていたようだ▼地球上で人間は特別でも偉くもないと自覚すれば、自然や環境保護への姿勢も変わるのではないか。シジュウカラを突破口(とっぱこう)に、無限の豊かさや共生の道が開けるかもしれない。
- シジュウカラ
- オウム
- ドリトル先生(ドリトルせんせい、Doctor Dolittle)シリーズは、20世紀前半にアメリカ合衆国で活動したイギリス出身の小説家[1]、ヒュー・ロフティングによる児童文学作品のシリーズ。