2023年5月11日
さようならノッポさん
じつは、ノッポさんは小さい頃から、工作(こうさく)が大の苦手(だいのにがて)だったという。模型飛行機(もけいひこうき)づくりで竹ひごを火であぶると、失敗作の山が出来る。魚釣り(さかなづり)へ行っても糸を結べ(むすべ)ないから、針なしで水面にぽちゃり。セロハンテープを長く貼れば、途中で脱線してしまう▼かつてのファンの一人としては、信じられない。1990年まで約20年間続いたNHK教育テレビの「できるかな」は、夢のような空間だった。チューリップハットのノッポさんがちょっと細工(さいく)をすると、牛乳パックや洗濯ばさみ(衣類が乾きやすいハンガー )がすばらしい宇宙船や動物に生まれ変わる。自分も、と挑戦した人は少なくあるまい▼番組ではずっと黙ったままだった。なのに真剣に向き合い、楽しむ気持ちが画面からあふれていた。だから愛された。終了後、講演などで「分かりましたか?」と聴衆に聞くと、いい大人たちが「ハーイ」と童心にかえって答えたそうだ▼「子ども目線」という言葉が嫌いだった。子どもと言わず「小さい人」と呼んだ。「自分が小さかったころをよーく思い出してみるといいのです。決して見下す(みおろす)ような相手じゃないでしょう」▼ノッポさん、高見のっぽ(たかみのっぽ)さんの訃報(ふほう)が届いた(とどいた)。昨秋に88歳で亡くなっていたと聞き、驚きと寂しさがわき上がる▼後年には歌手デビューし、しゃべる場面も増えた。でも、心に残るのはやはり「できるかな」の最終回で初めて披露された艶(つや)のある声だ。「ああ、しゃべっちゃった。長い間、みんなと友達でいましたけど(略)さよなら」
竹ひご(たけひご、竹簽・竹籤)は、竹の茎を細かく割ってつくられた細い棒である。 竹は材としては中空の筒であり、繊維が縦方向に強く配列する。
高見 のっぽ(たかみ のっぽ、以前の芸名:高見 映(たかみ えい)、本名:高見 嘉明(たかみ よしあき)、1934年〈昭和9年〉5月10日 - 2022年〈令和4年〉9月10日)は、日本の俳優、作家。京都府京都市右京区出身。
『なにしてあそぼう』『できるかな』(NHK教育テレビジョン、1967年 - 1990年)にて、一切喋らないキャラクター「ノッポさん」を務め上げ、放送終了後の現在でも「ノッポさん」の愛称で親しまれた。
- チューリップハットの高見さん