2023年5月1日

SFの父が描いた未来図

 火星人が地球を襲う『宇宙戦争』などの作品でSFの父と呼ばれる英作家H・G・ウェルズ(Herbert George Wells)[1] は1933年、壮大な未来小説を発表した。西暦2106年の時点から過去の1世紀半を振り返る『世界はこうなる』は、奇想天外な展開だが、いま読んでも興味深い▼発表されたのは、ヒトラーがドイツ首相に就任し、日本が大陸侵略に向かうなどファシズムが暴威(ぼうい)を振るい始めた時期だ。第1次世界大戦後の国際軍縮会議に出席したウェルズは、小説で次の大戦を予想しつつ、ユートピア的な世界国家の成立に至る未来図を描いた▼目を引くのは人口の推移だ。戦争や疫病が重なる(かさなる)なかで世界人口は激減し、破局(はきょく)を迎える。22世紀に入っても25億人しかいないようだ▼実際の世界人口は昨年、80億人を超えた。インドと中国だけで28億人以上いる。ただ、国連によると、世界の3分の2は人口維持に必要な出生率に達していない国や地域に住んでいるという。増え続けているのは限られた地域だ▼減少の最先端にある日本では先日、2070年に8700万人になるという将来推計人口が公表された[2]。しかも、総人口の1割が外国人との前提である。低賃金や円安が続けば流入が減り、もっと少なくなるかもしれない▼ウェルズの小説では、世界の再建過程で人口が監視・抑制された。現実の社会では、あってはならないことだ。人口とは出生や死亡、国境を越えた移動以外にも、生身(なまみ)の人間の複雑な要因や感情が絡み合った結果の数なのだ。


[1] ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866年9月21日 - 1946年8月13日 79歳没 ロンドン)は、イギリスの著作家(ちょさっか)。小説家としてはジュール・ヴェルヌとともに「SFの巨人」と呼ばれる。社会活動家や歴史家としても多くの業績を遺した。H・G・ウエルズの表記もある。

HerbertGeorgeWells.png

[2] 総務省統計局


世界の出生率、驚異的な低下 23カ国で今世紀末までに人口半減=米大学予測

最も影響を受ける国は

日本の人口はピーク時の2017年には約1億2800万人だったが、今世紀末までに5300万人以下に減少すると予測されている。

イタリアでも日本と同様に、同時期に約6100万人から約2800万人へと劇的に減少するとみられている。

日本とイタリアに、スペインやポルトガル、タイ、韓国などを加えた計23カ国で、人口が半数以上減少すると予測されている。

マリー教授は「仰天するほど驚くべきこと」だと私に語った。

現在世界で最も人口の多い中国は、今後4年でピークの約14億人に達し、その後は2100年までに半数近く減少して約7億3200万人になると見込まれている。そしてインドが人口で世界一になるという。

イギリスは2063年に約7500万人となってピークを迎え、2100年までに7100万人へと減少する見通し。