2023年7月3日 5時00分

ハーフでなく、ダブルです

 「どこの国の出身ですか」。日本で生まれました。「うおーハーフかいな」。ハーフじゃないです。ダブルです。「箸の使い方、上手やなあー」。……。「日本食は好きなん」。はい。「きょうは外人、多いなあ」▼ラーメン屋の客が、見た目が外国人のような若者に対し、立て続けに不躾(ぶしつけ)な質問を放つ。いかにも不愉快といった表情で、言葉少な(ことばずくな)に応じる若者。4年前に発表された映画『WHOLE』の一場面である▼兵庫県出身の川添ビイラル(かわぞい ビイラル)さん(33)が監督を務めた。父親はパキスタン籍、母親は日本人。自分や弟の体験を盛り込んだ作品だ。この国に生まれ、育ったのに、日本人とみられない若者たちの心の葛藤(かっとう)を描いた▼いま日本で生まれる子どもの100人に2人は、片親が外国人だ。彼らを外見だけで外国人扱いする偏見の強さに驚く。一方で、スポーツなどで活躍すれば、「国の誇り」と持ち上げる。そんな嫌な風潮(ふうちょう)はないだろうか▼先日、一本の投書が本紙に載っていた。「ハーフが関西弁でしゃべると気持ち悪い」。大阪の中学生は、かつて同級生に言われたという。幼いころから「当たり前」に使ってきた関西弁だが、それからは話すのを避けるようになったそうだ。読んでいて、何とも暗い気持ちになった▼「相手のことを知らず、知ろうともしないから、傷つけてしまうのかな」。川添さんは言った。自戒(じかい)を込めて思う。自分の何げない一言が、誰かを悲しくさせていないか。もっと想像力を、多く持ちたい。