2023年7月17日 5時00分

(きょう、誰と食べる? 孤食を考える:2)子ども3人で食事、気になりLINE

 子どもたちだけで食卓を囲む姿を思い浮かべる。仕事だから仕方がない。頭では分かるけど、もどかしい気持ちは消えない。

 ひとりぼっちではないものの、親子での語らい(かたらい)がない食卓。それも「孤食」かも。そう思うと、ちゃんと食べてくれたかが気になって、頻繁にLINEを送る。

 愛知県に住む女性(43)は派遣の事務員として働きながら、17歳、15歳、11歳の男女3人の子どもを育ててきた。夫は10年ほど前に亡くなった。実家は遠方(えんぽう)だ。

 生活の厳しさもあって、2年ほど前に実入りのいい長距離トラックの運転手へと転じた。北海道から九州まで月平均で約1万キロを移動する。カレンダー通りに休めることはない。自宅のドアを開けるのは、子どもが寝静まった後になる日もある。午前3時に家を出て、仕事に向かうこともある。

 ■休日に作り置き

 休みの日には、おかずを作り置きする。冷蔵庫や冷凍庫は、密閉容器に入ったカレーや豚汁(とんじる)、ナスの煮浸しなどであふれている。育ち盛りの子どもたちだ。帰宅すると、その減り具合をみて安堵(あんど)する。

 いつもは3人の子どもだけで食べることが多い。たまに早く帰宅すると、小学生の次女は「お母さんも食べるでしょ?」と声をかけてくる。食卓を囲むと、学校でのできごとなど、何げない日々のことを、せきを切ったように教えてくれる。「本当は一緒に食べたいだろうな」。また、もどかしい気持ちになる。

 家庭のほかに、誰かと一緒に食事をともにできる場があれば、子どもたちも寂しさを感じずに済むかもしれない。「子ども食堂が近くにあれば」。女性はそう口にする。

 共働きやひとり親世帯の増加などのほか、貧困対策や居場所としての拠点づくりなども背景に、子ども食堂は増加傾向にある。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」によると、2022年度は全国で7363カ所と過去最多(さいた)となった。

 同法人の湯浅誠(ゆあさ まこと)理事長は「単身世帯の増加や、町内会などの身近なコミュニティーが少なくなる中、子ども食堂が地域コミュニティーづくりの重要な拠点になっている。子ども食堂がインフラのように当たり前になっていくことが望ましい」と話す。

 農林水産省の19年の調査によると、地域や職場などで食事会の機会があれば参加したいと思うかとの問いに、「そう思う」と回答した人が「そう思わない」を上回り、4割を超えた。特に50歳代の男性、40歳代と70歳以上の女性では、ほぼ半数に達する結果となった。

 ■幅広い世代集う(つどう)

 名古屋市中川区でデイサービスや特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人フラワー園では、認知症カフェと子ども食堂を合体させた「ひおき未来食堂」を開いている。デイサービスの利用者や地域住民を含め、どの世代でも参加できる。

 3月の日曜日の昼食時、親子連れから90代の高齢者まで幅広い世代の約60人が集まった。

 メニューはコロッケ。各テーブルに8人ほどが座って、食事を楽しむ。食後にお年寄りが子どもたちに折り紙を教え、あちこちで話が弾んだ。

 愛知県豊川市の団体職員、堀口久子さん(46)は娘(11)と息子(9)と参加した。仕事のため、普段は子どもたちとなかなか一緒に食べられないといい、「高齢の人とも話をしながら食事を中心に会話ができる。貴重な場だなと思います」と話した。

 子どももお年寄りも、一人ではなく、みんなで食べるひととき。一人暮らしだという女性(85)は目を細めてつぶやいた。「正月、盆くらいしか大勢で食べることもない。孫はみんな成人したけど、ここでは小さい子たちとも一緒に食べられて楽しい」

 (三宅梨紗子(みやけ りさこ))