2025年4月29日 5時00分
コンクラーベを前に
フランシスコ教皇(きょうこう)の葬儀が終わり、イタリアは次期教皇を決める秘密選挙「コンクラーベ」の話題で持ちきりだという。地元メディアは、有力候補と目される枢機卿(すうききょう)たちを「パパビリ」と呼ぶ。経歴や人柄のほか、保守派か改革派かなどについても盛んに報じている▼パパビリ情報を知りたいのは一般(いっぱん)のカトリック信者だけではない。実は、選ぶ側も切に求めているのだ。かつて取材した経験でいうと、枢機卿の多くは世界各地で働いており、驚くほどお互いを知らない。12年前の前回は、枢機卿になりすましたドイツ人にしばらく気づかず騒ぎになった▼選挙前に枢機卿が集結するこの時期、ローマのあちこちで会合や食事会が開かれているはずだ。国籍や言語、修道会などが同じ枢機卿同士が集まり、情報交換をする▼バチカン専門記者のジェラード・オコネル著『フランシスコ教皇の選挙』(未訳)を読み、前回は事前の会合が重要だったのだと知った。保守的な教皇の選出を嫌った(きらった)約15人の枢機卿が前夜に集まり、第1回投票から改革派の流れをつくると決めた様子は緊張感に満ちている▼さて、今回はどうだろう。来月に始まるコンクラーベで、選挙権を持つ80歳未満の枢機卿は135人。約8割がフランシスコ時代に就任しており、出身国は前回の48から71へと大幅に増えた▼多様化が進んで新顔(しんがお)が増えた分、パパビリの情報収集はさらに難しくなったかもしれない。秘密選挙は幕開け前から、駆け引きが始まっているのだ。